山の学校ビオトープ倶楽部

a

第1章 調査概要




1.1  調査目的

さくとう山の学校のサテライト地区・環境学習の場、グラウンドワーク展開の場をとして活用可能な場所抽出にむけて、その候補地として選定した調査場所の動植物相の概況を把握するとともに、今後の利活用の方向性についての提言を整理することを目的とした。

1.2  調査実施日程

現地調査(植物調査・小動物調査・昆虫類調査):平成19年8月〜10月 

1.3  調査場所

岡山県美作市領家地先の棚田型の放棄水田及びその周辺(図1.1(1)・(2)参照)



図1.1(1) 調査場所

a


カスミサンショウウオは、春に低山の丘陵地の湿地帯や水溜まり産卵する両生類で、里山の雑木林に棲む小型のサンショウウオである。カスミサンショウウオが生息するためには、棚田や湿地帯など水辺のある里山雑木林(落葉広葉樹林)の環境が必要である。

このような里山の環境は、かつて、山村地域に広くみられたが、戦後の拡大造林により、雑木林の多くはスギ・ヒノキの植林地へと変貌し、昔見られた明るい落葉広葉樹の林は少なくなった。また、カスミサンショウウオの産卵地となっていた湿田棚田は、圃場整備などの農業土木事業により、水はけのよい大きな水田に代わり、卵塊が多く見れられた水路もコクリート二次製品により、生き物の棲みにくい形状となっていることから、カスミサンショウウオの姿は、山村からも次第にみられなくなっている。

加えて、少子高齢化が進行する中山間地域においては、農地の保全も困難となっている地域も多く、美作市福山地区の廃校周辺の耕作放棄水田に、昔懐かしい棚田と雑木林の風景を再生し、里山ビオトープ公園として管理活用することで、カスミサンショウウオをはじめ、タガメ、アカトンボ、メダカの棲む生物多様性の高い里山の環境の再生をはかる。

これら、カスミサンショウウオなど里山生態系の保全再生の活用は、地域内に多くの残る茅葺き民家の保存とあわせて、「田舎暮らし」に憧れる都市生活者との連携のもとに進め、里山グリーンツーリズムの促進など、中国地方の山里の残る昔懐かしい里山の自然と景観、生活文化を資源にした農村コミュニティビジネスとともに事業展開をはかる。


図1.1(1) 調査場所
s
図1.1(2) 調査場所




1.4 調査方法




1)植物調査


調査範囲内に分布する植生概要、生育する植物を把握することを目的とした植生概要の把握・植物相調査、調査範囲に特徴的に広がっている各樹林がどのような構造になっているかを把握することを目的とした群落組成調査の2種類の調査を行った。

@植生概要の把握・植物相調査

調査範囲内を踏査し、調査区域内に分布する植生概要を整理するとともに、出現する維管束植物種の確認を行った。また、後述する群落組成調査による確認種も併せて植物リストとして整理した。

A群落組成調査

調査範囲に特徴的に広がっている落葉広葉樹林、アカマツ林、及び植林を対象とし、できるだけ均質な場所を選定し、10m×10m程度のコドラートを設置、階層(高木層、亜高木層、低木層、草本層)別に生育種及び各種に対しての平面的な分布情報として被度(植被状況を+、1〜5の6段階評価)、群度(分布形態を1〜5の5段階評価)等を記録した。

2)小動物調査


調査範囲内に生息する小動物を把握することを目的とし、項目毎(両生類、爬虫類、哺乳類)に以下に示す確認内容により生息種の確認を行った。

両生類は目撃、鳴き声、捕獲による種の確認を、爬虫類は目撃と捕獲による確認をそれぞれ行った。哺乳類はフィールドサイン(足跡や糞などの生息を示す痕跡)の確認を中心に行った。

3)昆虫類調査


調査範囲内に生息する昆虫類を把握することを目的とし、捕虫網等を用い生息する昆虫類の確認に努めた。また、日没後はガ類等の走光性をもつ種を対象としたライトトラップ法を実施した(カーテン法、3時間程度)。なお、鳴き声や目撃により明確に種名を判断できるものについても記録した。

tr>
図1.2 現地調査実施概況


戻る



第2章 小動物調査




1)確認された小動物


両生類8種、爬虫類3種、哺乳類4種の合計15種の小動物の生息を確認した。

両生類としては、ウシガエル及びモリアオゲルが東に位置する溜め池で、それ以外の両生類は、放棄水田やその周辺の植物帯付近で確認された。

爬虫類としては、イシガメと推定されるカメの一種(sp.)を溜め池で、比較的乾燥した放棄水田周辺の砂地や石の上及び林道でカナヘビが見られた。このほか、放棄水田においてカエル類を襲うヤマカガシ個体が目撃された。

哺乳類としては、乾燥が進んだ畦上のイネ科雑草地でカヤネズミの古巣が、林道でテンの糞が確認された。また、溜め池の近くで、ニホンイノシシの掘り返しが多数確認され、足跡を中心として、ニホンジカの生息痕が調査範囲のいたるところで見られた。

表2.3 確認された小動物
注)各綱の分類順体系は環境庁(1993)「日本産野生生物目録−本邦人産野生動植物の種の現状−(脊椎動物編)」に準じた。


戻る



2)注目すべき小動物

注目すべき小動物、その生息痕として、表2.4に示す6種(イモリ、トノサマガエル、シュレーゲルアオガエル、モリアオガエル、イシガメ?、テン)が確認された。

2)注目すべき小動物

図2.6 注目すべき小動物

トノサマガエル
シュレーゲルアオガエル
s
モリアオガエルの卵塊
テンの生息痕跡


戻る



3)小動物の重要な生息環境


確認された小動物の各種の選好する生息環境を再整理した結果を表2.5に示す。

確認された小動物の大半は、放棄水田を繁殖や餌場(水飲み場)環境として利用しつつ、その周辺の森林で生息していることが確認された。

このことから、小動物にとって重要な生息環境は、湿性状態が維持された環境を有する放棄水田とその周辺の里山であり、双方の要素を維持、管理することが生息している小動物を保全する上で留意すべき事項であると言える。

表2.5 確認された小動物の主要な生息環境


戻る


2.3昆虫類調査




1)確認された昆虫類


表2.6に示す9目50科113種の昆虫類が確認された。前述の通り、調査範囲内は「放棄水田環境」と「周辺樹林」に分けられる。以下に環境毎の確認状況について述べる。

表2.6

@放棄水田環境(溜池・放棄水田内・畦畔・採草地法面)

休耕田・ため池では多くのトンボ類が確認された。休耕田とため池では確認されたトンボ類に大きな差違はなかったが、オオルリボシヤンマはため池でのみ確認された。

本種は比較的寒冷で浮葉植物等の水草が生育する池沼を好む。また、休耕田全域やため池の水草周辺では多くのイトトンボ類が確認されたほか、コオイムシは休耕田でのみ確認されたが、ため池にも同様に生息するものと考えられる。


オオルリボシヤン
コオイムシ
s
キイイトトンボ
ハグロトンボ


A樹林地

樹林地ではコナラ、クヌギ、アラカシ等樹液を滲出する樹木周辺で多くの昆虫類が確認された。これらの地点では雑木林の代表である、ノコギリクワガタやカブトムシ、スミナガシ、ゴマダラチョウ、オオムラサキ等が確認されたほか、林縁部ではオニヤンマ等も確認された。また、夜間実施したライトトラップ法では各種クワガタムシ類の他、大型のガ類であるスズメガ類やアゲハモドキといった種が多数確認された。

戻る

図1.1(1) 調査場所

樹液に集まる昆虫類
オオムラサキ


戻る

表2.6

注) 和名、学名、種の配列は環境庁(1995)「日本産野生生物目録-本邦野生植物の種の現状-(無脊椎動物編U)に準じた。
*1 一般:一般採集法。捕虫網やタモ網等を用いて直接捕獲する方法。目視や鳴き声により判別した種を含む。
*2 LT:ライトトラップ法。ガ類等、夜間光に誘引される種を紫外線灯とカーテンを用いて捕獲する方法。




2)注目すべき昆虫類


注目すべき昆虫類として表2.7に示す3種(ハグロトンボ、コオイムシ、オオムラサキ)が確認された。


表2.7注目すべき昆虫類


戻る



3)昆虫類の重要な生息環境


確認された注目すべき昆虫類、調査区域の環境を特徴づける種が選好する生息環境等を整理した結果を表2.8示す。

表2.8 各種の生息環境、特徴


調査地点は休耕田・ため池を中心にその周辺に樹林地が広がっている。確認された種のうち、トンボ類の多くは休耕田・ため池周辺で確認されたが、そもそも休耕田は現状では耕作が放棄されており、水路の土砂浚いや畦畔の草刈り等といった一般的な営農活動が継続してなされていない。

このため、今後水路が埋まり、水路・水田の水の流れが無くなれば、乾田化が進行し、これらのトンボ類やコオイムシ等の水生昆虫類は生息することが困難となる恐れがある。

また、雑木林を主体とする樹林地でも現状、管理がされておらず、今後も林床管理がなされなければ、樹林が荒れ、生息する昆虫類の多様性が失われる可能性がある。

本調査で確認された昆虫類の多くは、もともと水田を含む里山に生息するものがほとんどであった。これらの種は原生の自然ではなく、ある程度人の手が加わった二次的な環境の上に生息可能な種である。このため、生息基盤が脆弱で、耕作放棄、林床管理放棄がこれらの種の生息に強く影響し、全国的に減少が伝えられている種も多く含まれる。

これらのことから、本地域を特徴づける休耕田・ため池及び樹林地(特に雑木林)の管理が今後持続的に継続されることが望まれる。

戻る



第3章 後の利活用の方向性についての提言(詳細調整・検討中)






戻る



3)注目すべき植物


注目すべき植物として、イヌタヌキモ、イトモ、イトトリゲモ、ヒメミクリが確認された。表2.2に各種の注目すべき種の選定基準、確認状況、主な生育環境、生活型を、確認位置を図2.5に示す。
表2.2注目すべき植物


図2.4 注目すべき植物

イヌタヌキモ
イトモ
s
イトトリゲモ
ヒメミクリ


注目すべき植物はいずれも休耕田及びその周辺の湿性環境が維持された区域で確認された。このことから、注目すべき植物にとって重要な生育環境は、湿性状態が維持された環境を有する放棄水田であり、その要素を維持、管理することが生息している植物相を保全する上で留意すべき事項であると言える。

戻る

図2.5 注目すべき植物の確認位置


戻る