智頭町町民環境会議 |
a |
田舎暮らし研究会 智頭(お知らせ)山の環境を活かしたヘルスツーリズムや森林セラピー、田舎暮らしの拠点となる茅葺き古民家の復元を考え、意見を自由に言ってもらう会を開催しますので、多数ご参加下さい。 開催日:平成22年7月22日(木) 集合時間:13時 集合場所:芦津いろりの家 (駐車場は山形地区第2公民館をご利用下さい。) 参加費: 宿泊者 5000円、交流会のみ2000円 (夕食等は自分でつくります) タイムスケジュール 22日 13:00 集合、打ち合わせ 13:10 森歩き 源流コース 14:30 会議(佐野先生参加) 16:30 終了後、粟倉温泉へ 18:00 交流会(芦津いろりの家) 23日 解散 清水さんは残りガイド養成講座の打ち合わせ 幹事:長谷川、大呂 連絡先:090−9465−6040(長谷川) メール:hasegawa@town.chizu.tottori.jp 主催:グラウンドワーク大山蒜山、共催:智頭町環境町民会議 |
芦津渓谷の原生自然的環境鳥取県智頭町芦津渓谷一帯は、東山(1,388m)を最高地点に標高1200〜1300mの山々が連なる東中国山地で最も山深い山岳源流域でり、ブナ・スギ天然林、ブナ・チシマザサ群落など自然性の高い植生域が広がる一方で、広い面積で人工林(スギ植林)として利用されている。 芦津渓谷は馬蹄形に連なる稜線に囲まれ、深い峡谷を成している。中国山地は浸食が進んだ老年期の山地である。芦津渓谷の峡谷域は、里山的要素の強い中国山地にあって、 原生自然的な要素が多くみられる秘境域であり、大自然が創りあげた渓谷と自然林の絶景がみられる。 ここでは、連続する滝や渓畔林が美しい渓流の風景をなし、谷沿いにトチノキやミズナラ、カツラの巨樹も多くみられる。また、山地斜面には、天然スギとブナが混交する原生自然的な森林域が広がり、クマタカやヤマネなど絶滅のおそれがある希少な野生生物も多く生息しているとされている。 智頭町町民環境会議![]() 本環境会議の活動の場となるフィールドは、智頭町を中心とする西中国山地であり、千代川流域である。 これまで行ってきた主な活動として、智頭町役場と協働しての智頭町環境基本計画の策定をはじめ、3回の源流環境シンポジウムの開催(平成13年11月、平成14年11月、平成15年10月)、10回の自然観察指導員養成講座の開催(いずれも平成13年度開催)、7回のエコライフ研究会の開催、5回の環境パトロールの開催、荒廃植林地での広葉樹植栽(平成15年度)、環境マップの作成(平成14年度)などがあげられる。 とくに芦津渓谷では、鳥取大学や山林所有者と連携して、巨樹巨木調査、自然歩道の設置、自然観察トレッキングツアー(4回)を行っており、平成14年の源流環境シンポジウム以降「源流の巨樹と森の回廊」を提唱している。 とりわけ、過疎高齢化が進行している源流域の町村では、環境保全活動に携わる人間が少数固定化し、行政とのパートナーシップをはかるにも情報不足、専門性不足、人材不足などの問題に直面していることから、源流地域住民の交流と連携を目的に、昨年10月には鳥取県、岡山県、広島県、島根県など中国山地の源流域で環境保全活動に取り組む個人・団体を声をかけ、第1回源流環境フォーラムを智頭町で開催している。 また、昨年実施の荒廃植林地での広葉樹植栽活動では、鳥取市内の小学生に参加を呼びかけ、環境学習活動としてもグラウンドワークを展開している。 氷ノ山後山那岐山国定公園に属する芦津渓谷には、ブナ・スギの極相林や深い峡谷など、里山的な要素の強い中国山地にあって原生的な自然が残り、その奥地には鳥取県下屈指のトチノキやカツラ、スギ、ミズメ、ミズナラ、ブナなどの巨樹の育つ秘境域が存在している。 そのような秘境域については、多くの人を招き入れ、観光利用をはかるのではなく、本当に山の自然を愛する人に知ってもらい、大切にしてもらいと願っている。 一方で、その貴重さや学術的な価値を多くの人に知ってもらうことで、地域の資源(宝物)として保護保全を考えたり、環境学習の場として活用することも環境保全につながる。 智頭町町民環境会議は、設立以来千代川源流域の環境保全活動に取り組んでおり、過去4回にわたり源流環境シンポジウムを開催し、芦津渓谷の素晴らしい自然について様々な角度から保護保全を呼びかけている。 また、芦津渓谷の巨樹巨木調査にあたっては、鳥取大学とも連携して取り組んでいる。 戻る 渓畔林再生による「水と緑の回廊」づくり
渓畔林の風景的な価値や自然環境保全上での再評が高まりつつある。美しい渓流や巨樹が生育する渓畔林の環境は、エコツアーや源流トレッキングの舞台として人気が高く、水辺に接する落葉樹林は生物多様性を高め、多くの野鳥や小動物、水生生物にとって良好な生息環境となる。 山の観光とエコツーリズム 戻る 山の観光とトレッキング トレッキング[trekking]とは「山地を歩いて風景などを楽しむこと、山歩き」とされている(岩波書店の広辞苑)。トレッキングの本来の意味は、困難の伴うゆっくりとした旅行であるが、転じて、軽い山歩き、比較的長期間のハイキング、スキーの平地滑走などのような、主として健康とレクリエーションのための徒歩旅行をさす。ヒマラヤのトレッキングが有名である。登山との違いは、登頂を目的としないこと。気楽にゆったりと山麓を歩き回りながら、自然を感じたり、土地の人々との触れ合いを楽しむのが醍醐味とされている。ここでいうトレッキングの概念をハイキングを含む歩く旅(あるいは観光)とし、山歩きだけでなく、里歩きや野道を歩いて地域の自然や歴史、生活文化を楽しむ旅をトレッキングと呼ぶことにする。 渓畔林は環境観光資源 絶滅が危惧される野生生物芦津渓谷一帯は、里山的環境要素の強い中国山地にあって、深い峡谷をなし、渓谷に続く山地一帯にはブナ・スギ天然林が広がる原生自然的な環境が広く残っていることから、変化に富んだ地形・植生をなし、生物多様性も高く、多くの野生生物の生息空間となっていると考えられる。東中国山地では、国定公園域を中心に豊かな自然環境が残されており、野生生物が多数生息しているとされている。一方、芦津渓およびその周辺山地では、中国自然歩道整備に係る自然環境調査がなされているが、この地域で見られる野草や樹木、昆虫について紹介した書籍は少なく、系統だった野生生物調査はあまりなされていない。 山地での自然再生活動と観光 山里を訪ねる観光「山の観光」を考える場合、芦津渓谷のような人里離れた秘境域を巡るエコツーリズムも魅力であるが、そのような大自然の有する山地の麓には、静かな山里の風景が開け、山間を流れる清流の環境が見られることも多い。これまで、そのような山里の環境は観光の対象とはされなかったが、古き良き時代の懐かしい日本の原風景が失われゆく中、山里の自然や景観、歴史、生活文化が観光資源として着目されつつある。 都会での生活に飽き、静かな山村での「田舎暮らし」に憧れる都市生活者の少なくない。 しかし、その山里も過疎高齢化が進行し、荒廃の道をたどりつつあるとされ、農山村の活性化が求められている。ある意味で山里は都市と農村との交流の舞台であり、グリーンツーリズムのフィールドでもあることから「山の観光」を考える上で興味深い地域であるが、そこは人の生活の場であり、これらオルタナティブ・ツーリズムに対応すべき観光プログラムや仕組みづくりが求められている。 山の自然や風景を楽しむ旅エコツーリズムやグリーン・ツーリズムなどのオルタナティブ・ツーリズム増加にみられるように、旅や観光のスタイルが団体観光から少人数旅行に推移する中、旅なれた人も多くなり、写真撮影などを目的に一人で山村や美しい自然域を訪ねる個人旅行もその需要が高まることも考えられる。 自然や風景について国民それぞれが自分の趣味や感性に応じた楽しみ方をみにつけてくると、新しい観光文化や環境倫理も生まれてくる。観光に対する個人の考え方もそれぞれによってかわってくる。そうなれば、専門ガイドを必要としないエコツーリズムが普及することや、あるいは、山里や山地で出会う住民や別の旅人が来訪者の質問に答える形で、にわかガイドになってその土地の自然や生活文化について説明する観光交流の形ができることも考えられる。 そのためにも温もりのある山里の自然と風景を大切にし、新しい「山の観光」のスタイルを求めていきたい。 氷ノ山後山那岐山国定公園に属する芦津渓谷には、ブナ原生林や渓谷・滝など、素晴らしい自然が残り、奥地にはサンクチュアリー(聖域)と呼ぶべき巨樹の育つ秘境域が存在している。 智頭町では、氷ノ山後山那岐国定公園を中心に豊かな自然環境が残されており、芦津渓谷〜鳴滝山〜東山〜沖ノ山にかけての山地には、絶滅が危惧される野生生物が生息している。 対象地内は、稜線山腹域と渓谷域に分けられ、渓谷域一帯および稜線山腹域には広く落葉広葉樹林(ブナ・スギ天然林、ブナ・チシマザサ群落、ブナ・ミズナラ群落)が分布している。 芦津渓(北股川)を中心とする渓谷域には、深い峡谷と発達した自然林がみられ、ブナ・スギ天然林、トチナキやサワグルミからなる渓畔林、ブナやミズナラからなる落葉樹林が生物多様性を高めている。 また、渓谷域に続く稜線山腹域は、東山(標高1,388m)を最高地点に、標高1200m〜1300mの峰々が馬蹄形に連なる中国山地でも最も深く険しい山岳域であり、ブナ・スギ天然林、ブナ・チシマザサ群落が発達する一方で、広範囲に人工林(スギ植林)として利用されている。 芦津渓は、この馬蹄形に連なる稜線に囲まれるように深い峡谷を形成しており、絶滅が危惧される野生生物も多く確認されていることから、「野生生物の保護」について環境配慮が必要である。 中国山地は浸食が進んだ老年期の山地であるが、芦津渓の峡谷域は、里山的要素の強い中国山地にあって、原生自然的な要素が多くみられる秘境域であり、大自然が創りあげた渓谷と自然林の絶景ががみられ、連続する瀑布や巨樹がアクセントとなって印象的な渓谷景観をなしている。 このような芦津渓の渓谷景観、巨樹林の景観は、原生自然的な景観要素に乏しい中国、四国、近畿地方にあって珍しく、観光資源としても高く評価されることから、「自然景観・風景の保全」が必要とされる。 さらに、対象地(芦津渓谷〜鳴滝山〜東山〜沖ノ山一帯)は、東中国山地にあって、岡山県、兵庫県との県境近くにあり、広く氷ノ山後山那岐国定公園に含まれている。そして対象地内を縦断するように中国自然歩道が通っており、雄大な峡谷やブナ・スギ原生林のロケーションを背景にトレッキングやエコツーリズムのフィールドや環境学習の場としての利用を考えるに適した場所ということになる。 加えて芦津渓の下流部には、智頭町を代表する観光拠点の「みたき園」があり、年間多くの観光行楽客が訪れていることから、峡谷域を含む「林野域の自然公園活用」が望まれる空間でもある。 戻る 芦津渓谷の環境保全氷ノ山後山那岐山国定公園に属する芦津渓谷には、ブナ原生林や渓谷・滝など、素晴らしい自然が残り、奥地にはサンクチュアリー(聖域)と呼ぶべき巨樹の育つ秘境域が存在している。 野生生物の保護 巨樹巨木芦津渓谷では、発達した渓畔林がみられ、トチノキ、サワグルミ、カツラ、ミズメ、ケヤキ、ミズナラなど大径木が育っている。また、鳴滝山の自然林では、ブナや天然スギの大木が多くみられ、巨樹林を形成していることから、芦津渓および近接域について巨樹の分布調査を実施し、巨樹の保護保全のための方策を検討する。 戻る 生物多様性の保全![]() ![]() 芦津渓谷についてみれば、トチノキやカツラの巨樹が育つ二つの滝谷の渓谷林が目を引く。山地斜面は山林となっており、植林地とパッチワークを形成する落葉樹林が生物多様性を高めている。 植林地(スギ植林)は、それだけを見れば、植生自然度は低く、野生生物の繁殖に適さない空間であるが、間伐などよく管理された植林地は、下草が育ち、小型の野鳥や小動物、昆虫の生息環境となっている。 芦津渓およびその周辺域における野生生物の保護を考える上で、植林が進んだ沖ノ山の位置づけは重要であり、渓流に沿った渓畔林や落葉広葉樹林を含む生物多様性に富んだ環境を維持することで、絶滅が危惧される種や希少野生生物の保護およびその生息環境の保全とあわせて、芦津渓から沖ノ山でみられる地域固有の生態系の保護保全をはかる。 戻る 稜線山腹域での生物多様性の保全鳴滝山から東山、沖ノ山と連なる山地の稜線山腹域は、東山(標高1,388m)を最高地点に、標高1200m〜1300mの峰々が馬蹄形に連なる中国山地でも最も深く険しい山岳域であり、ブナ・スギ天然林、ブナ・チシマザサ群落が発達する一方で、広範囲に人工林(スギ植林)として利用されている。 芦津渓谷は、この馬蹄形に連なる稜線に囲まれるように深い峡谷を形成しており、ここでは、稜線山腹域について生物多様性の保全方策を検討した。 @自然林・二次林の保全 ブナ・スギ天然林を含む自然林については聖域的に保全するとともに、ミズナラやシデが育つ二次林(落葉広葉樹林)についても保全をはかり、自然遷移による極相林への復元をはかる。 A広葉樹林の再生 伐採跡地については、一帯がブナ・ミズナラの林へと遷移するよう自然植生の復元をはかる。とくに、芦津渓谷の上流の伐採跡地や沖ノ山の伐採地については、谷筋部分についてトチノキ渓畔林の再生をはかるとともに、ブナ・スギ天然林と谷筋の渓畔林が連続するよう広葉樹林帯を育成させる。 B人工林の手入れ管理 植林地(スギ植林)は、それだけを見れば、植生自然度は低く、野生生物の繁殖に適さない空間であるが、間伐などよく管理された植林地は、下草が育ち、小型の野鳥や小動物、昆虫の生息環境となっていることから、人工林の手入れ管理を行う。 C針広混交林の育成 谷筋などで、スギが植栽され、単調になった人工林で、植林管理が困難な場所については、トチノキ、アワブキ、ケヤキを植栽し、針葉樹・広葉樹混交林の育成をはかる。 D草原環境の再生 伐採跡地などで平坦面を形成している山腹斜面の一部については、ウスイロヒョウモンモドキ、フサヒゲルリカミキリなど草原棲昆虫の生息環境となる、オミナエシやカノコソウの育つ二次草原(ススキ草原)の環境を再生させる。 希少野生生物の保護 これまで鳥取県東部および智頭町において生息が確認されている野生生物種から推定すると、芦津渓の渓谷域やそれに連続する森林域では、絶滅が危惧される生物種や希少種の生育生息の可能性が考えられることから、生物調査の結果を踏まえ、芦津渓谷一帯に生息環境を確保する。 1)希少な植物の保護 「レッドデータブックとっとり」などの文献資料によれば、芦津渓谷〜鳴滝山〜東山〜沖ノ山にかけての山地には、絶滅が危惧される植物が複数生育しているとされており、これら希少植物およびその生育環境の保護と保全をはかる。 @ブナ帯に育つ希少植物の保護 鳴滝山およびその周辺域ではブナ・スギ天然林が広く分布し、ブナ帯に育つ植物種が多種生育しており、絶滅が危惧される植物も生育している。これら希少植物が生育するブナ林の環境保全と再生をはかる。 A草原に育つ希少植物の保護 かつて中国山地には広く二次草原(ススキ草原)の分布がみられた。二次草原は、火入れや採草、放牧によって維持されてきた環境であるが、現在、全国的に急激にその面積が縮小しており、二次草原に育つキキョウ、アザミ類などが絶滅に危機にあるとされていることから、傾斜が緩やかな伐採跡地などに二次草原の再生維持をはかる。 B湿生植物群落の保護 芦津渓谷上流には、かつて湿地帯が形成されていたと考えられることから、湿生植物群落の生育可能性を精査するとともに、平坦な谷部や沢筋などに湿生植物が生育可能な湿地の再生をはかる。 2)希少な鳥類の保護 豊かな森林域がみられる芦津渓谷〜鳴滝山〜東山〜沖ノ山にかけての山地には、クマタカやイヌワシをはじめ絶滅が危惧される野鳥も多種生息しており、渓谷に発達する樹林を保全再生するなど、野鳥の生息環境を確保する。 3)希少な小動物の保護 芦津渓谷〜鳴滝山〜東山にかけての山地では、絶滅が危惧される哺乳類、両生・爬虫類も多種生息しており、渓流沿いに発達した渓畔林や広葉樹林を保全するなど、小動物の生息環境を確保する。 利用制限の実施 野生生物の保護を考える場合、多くの人が自然域(野生生物の生息域)に入ることによって、ワシタカ類など警戒感の強い野生生物への影響が懸念される。 また、行楽客のゴミや焚き火、自動車の通行は、野鳥や小動物に少なからず影響を与えていると考えられる。 さらには心無い入山者にとる希少な野生生物の採取も予想される。 これらについては、自然保護条例など法令による規制が必要であり、これを運用するにあたっては監視組織も必要となる。 現在、芦津渓谷では、ハンキング客や釣り客などの入山利用がある程度で、マナーも守られており、自然保護上での著しい問題は発生していない。 今後、芦津渓の人気が高まり、入山者が多くなれば、交通渋滞を含め、さまざまな問題も発生すると考えられることから、 当面は、自主的な環境パトロールを定期的に実施していく中で、必要に応じて、条例等による利用規制を検討していくこととする。 戻る 自然景観・風景の保全芦津渓(北股川)を中心とする渓谷域には、深い峡谷と発達した自然林がみられ、ブナ・スギ天然林、トチナキやサワグルミからなる渓畔林、ブナやミズナラからなる落葉樹林が生物多様性を高めている。 また、芦津渓谷一帯は、東山(標高1,388m)を最高地点に、標高1200m〜1300mの峰々が馬蹄形に連なる中国山地でも最も深く険しい山岳域であり、ブナ・スギ天然林、ブナ・チシマザサ群落が発達する一方で、広範囲に人工林(スギ植林)として利用されており、芦津渓は馬蹄形に連なる稜線に囲まれるように深い峡谷を形成している。 中国山地は浸食が進んだ老年期の山地であるが、芦津渓の峡谷域は、里山的要素の強い中国山地にあって、原生自然的な要素が多くみられる秘境域であり、大自然が創りあげた渓谷と自然林の絶景がみられ、連続する瀑布や巨樹がアクセントとなって印象的な渓谷景観をなしている。 このような芦津渓の渓谷景観、巨樹林の景観は、原生自然的な景観要素に乏しい中国、四国、近畿地方にあって珍しく、観光資源としても高く評価される。 加えて、沖ノ山スギで有名な沖ノ山の一帯には、よく管理されたスギの美林がみられ、智頭町特有の山林景観をみせている。 地域景観の保全、良好な景観の形成の2つを自然環境配慮方針の一つである自然景観・風景の保全における施策としてその内容を検討した。 戻る 林野域の自然公園活用![]() 渓谷の対岸(右岸)は自然歩道など整備されていないが、比較的渓流に近づきやすい場所も多い。また、その背後は深い森林域となっており、トチノキやカツラの巨樹が複数の育つ渓谷も存在する。加えて、芦津渓谷の上流には、かつて湿地帯が形成されていたと思える平坦な地形が広がり、伐採跡地となっている。ここでは比較的眺望も開け、高原的な雰囲気の空間であることから園地整備も可能と考えられる。 このように、芦津渓谷一帯は、雄大な峡谷やブナ・スギ原生林のロケーションを背景にトレッキングやエコツーリズムのフィールドや環境学習の場としての利用を考えるに適した場所ということになる。 現在、芦津渓谷には、芦津地区より上流には民家はなく、「みたき園」のほかには、ほとんど観光施設はみられないが、今後、トレッキングへの関心が高まり、都市と農村との共生・対流が促進される中、芦津渓谷一帯の自然公園活用に期待が高まっている。 芦津渓谷一帯は、自然公園(氷ノ山後山那岐山国定公園)に指定されており、自然環境の保全および活用が望まれることから、環境配慮方針の一つである林野域の自然公園活用をはかるため、対象地の自然状況および景観特性を考慮して土地利用ゾーニングを行い、環境再生整備を検討した。 1)土地利用ゾーニング 芦津渓谷一帯は、東山(標高1,388m)を最高地点に、標高1200m〜1300mの峰々が馬蹄形に連なる中国山地でも最も深く険しい山岳域であり、ブナ・スギ天然林、ブナ・チシマザサ群落が発達する一方で、広範囲に人工林(スギ植林)として利用されている。 芦津渓(北股川)は、この馬蹄形に連なる稜線に囲まれるように深い峡谷を形成しており、切り立った断崖絶壁の環境もみられる。 対象地は、山林(自然林と人工林)やササ草原の広がる稜線域と、深い峡谷をなす渓谷域、比較的緩やかな傾斜面からなる高原域からなる。ここでは、自然公園活用をはかるため、対象地を渓谷ゾーン、稜線ゾーン、高原ゾーンに区分し、そのれぞれのゾーンについて、環境再生整備方策を検討した。 渓谷ゾーンの自然公園活用 深い峡谷をなす渓谷ゾーンでは、渓畔林の保全再生、巨樹の保護・育成、ネイチャートレイルの整備をはかる。 @渓畔林の保全再生 渓流に沿って、渓畔林を保全再生することで、渓流にみられる生態系を保全するとともに、渓流畔の安定性の確保、清流景観の保全をはかる。 保全再生すべき環境は、トチノキやサワグルミ、ミズキ、カツラ、ニナノキなどの巨樹が育つ渓畔林である。保護・誘引すべき生物種として、アカショウウビン、ヤマセミ、オオサンショウウオが考えられる。 A巨樹の保護・育成 谷筋に発達する渓谷林や渓畔林には、トチノキやサワグルミ、ミズキ、カツラ、シナノキ、イヌシデ、ミズナラなどの大木が育っている。また、ブナ・スギ天然林は渓谷斜面にまでみられることから、大径木の分布調査結果を踏まえ、巨樹の保存・育成をはかる。 Bネイチャートレイルの整備 芦津渓の左岸斜面には、中国自然歩道が設けられている。渓谷の対岸(右岸)は自然歩道など整備されていないが、比較的渓流に近づきやすい場所も多い。また、その背後は深い森林域(ブナ・スギ天然林)となっており、トチノキやカツラの巨樹が複数の育つ渓谷も存在する。 丸太橋などを渡し、対岸に歩いて渡れるようにするとともに、谷筋や渓流畔の一部にはネイチャートレイル(自然歩道)を整備し、渓流域での自然観察、渓畔林・巨樹の観察、自然散策ができるよう、休憩舎や野鳥観察舎、自然解説板を設ける。 2)高原ゾーンの自然公園活用 比較的緩やかな傾斜面からなる高原ゾーンでは、湿原ビオトープの形成、自然林の再生、落葉樹林帯の育成、二次草原の復元、風景を楽しむ園地の整備、トレッキングルートの整備をはかる。 @湿原ビオトープの形成 かつて湿地が形成されていたとされる平坦な谷筋については、野生生物調査の結果を踏まえ、保護すべき生物種を特定し、湿地や池沼などの止水環境を形成させることで、ビオトープ空間として整備保全する。 保全再生すべき環境としては、モリアオガエル、カスミサンショウウオ、渓流棲のサンショウウオが産卵する池沼や沢湿地、緩渓流が考えられる。谷の上部で流れの緩やかな部分については湿生植物群落の再生を検討する。 A自然林の再生 自然性が低下した伐採跡地や人工林の一部を落葉広葉樹林(ブナ林やミズナラ林)に再生する。また、渓流に沿った湿潤の場所についてはトチノキ渓畔林やヤナギ湿生林の環境を復元し、保健保養性を高める。 B疎林環境の復元 自然性が低下した伐採跡地の一部についてカラマツ防風林やミズナラやトチノキ、カエデ類からなる樹林帯を育成するなど、疎林的な環境を再生し、生物多様性を高めるとともに、風景的な演出をはかる。 C二次草原の復元 緩やかなな傾斜の伐採跡地については、一部にビオトープとなる二次草原(ススキ野原)の環境を復元し、、ウスイロヒョウモンモドキなど絶滅が危惧される草原の生き物が棲息できる空間を確保する。 D風景を楽しむ園地の整備 視界の開けた平坦地については、林野域の一角に自然や景色を楽しむ園地(休憩園地、展望園地、ピクニック園地)を設け、行楽客や来訪者が休憩できるようにする。 Eトレッキングルートの整備 中国自然歩道とは別に、山の眺望や風景のよいコースを選定し、ネイチャートレイル(自然歩道)を整備するとともに、山小屋や非難小屋を設ける。 ネイチャートレイルは、中国自然歩道や東山の登山道に接続させ、中国山地の山歩きができるようにし、トレッキングエリアの形成をはかる。 3)稜線ゾーンの自然公園活用 山林(自然林と人工林)やササ草原の広がる稜線ゾーンでは、ブナ・スギ天然林の聖域保全、落葉広葉樹林の保全再生、自然観察登山道の整備をはかる。 @ブナ・スギ天然林の聖域保全 ブナやスギの大木が育ち原生自然的空間をなすブナ・スギ天然林については、一部、自然観察路を設け、巨樹林が見学できるようにする。 A落葉広葉樹林の保全再生 自然性が低下した伐採跡地や人工林の一部を落葉広葉樹林(ブナ林やミズナラ林)に再生する。 B自然観察登山道の整備 智頭町の最高峰である東山(標高1,388m)は、現在登山道がササに覆われ歩いて登れない状態にあることから、ブナ・スギ天然林やササ草原を巡る自然観察登山道や、鳴滝山への縦走路を整備するとともに、沖ノ山や東山など東中国山地の自然を紹介した自然解説板・案内板を設け、登山道を中国自然歩道と接続させることによって、山岳トレッキングルートの形成をはかる。 4)ビオトープの復元 ビオトープとはいわゆる生物の生息空間のことである。生命:バイオbioと、場所:トポスtoposの合成語である。ビオトープBiotop(独), biotope(英・仏)と書くが「有機的に結びついた動物群の生息空間,あるいは一時生息空間(1)」という定義が一般的であり,これはドイツ語圏でよく使われている。例えば,ブナ林,中小河川,湿地,溜め池など物理・化学的な環境条件が類似しており,そこに生息する生物群集に特徴づけられる空間である。 ビオトープを復元(再生)させることは、野生動物を保護することであるが、自然観察や生態観察園などとして活用することで、林野域の自然公園活用をはかることにも通じる。 @草原ビオトープの再生 緩やかなな傾斜の伐採跡地の一部については、ビオトープとなる二次草原の環境を復元し、オミナエシやカノコソウの混生するススキ草原を再生することで、ウスイロヒョウモンモドキなど絶滅が危惧される草原の生き物が棲息できる空間を確保する。 二次草原は、火入れや採草、放牧によって維持されてきた環境であるが、現在、全国的に急激にその面積が縮小しており、草原に生きるウスイロヒョウモンモドキなどの蝶が絶滅に危機に瀕してことから、伐採跡地のほかに、人工林の林縁部などに、山野草の育つ野草帯を設け、ビオトープとしてススキ草原を再生させる。 A渓流ビオトープの保全再生 芦津渓(北股川)に注ぐ支流渓流において、谷筋の人工林に手を加え、渓畔林を再生させることで、渓流ビオトープとしての環境を保全再生し、オオサンショウウオ、ブチサンショウウオ、ムカシトンボ、ムカシヤンマなど渓流に生息する希少な生物の生息環境の保全をはかる。 B湿原ビオトープの再生 芦津渓谷の上流には、かつて湿地が形成されていたとされる平坦な地形がみられるが、ここでは伐採跡地や人工林を湿原の環境に復元する。 ここでは、野生生物調査の結果を踏まえ、保護すべき生物種を特定し、湿地や池沼、緩渓流、湿生樹林などの水辺環境を復元させることで、風景を明るくするとともに、自然観察域としての環境を整備する。 保全再生すべき環境としては、モリアオガエル、カスミサンショウウオ、渓流棲のサンショウウオが産卵する池沼や沢湿地、緩渓流が考えられる。谷の上部で流れの緩やかな部分については湿生植物群落の再生を検討する。 C自然林ビオトープの保全再生 芦津渓谷〜鳴滝山〜東山〜沖ノ山にかけての山地では、絶滅が危惧される哺乳類、両生・爬虫類も多種生息しており、ブナやスギ、トチノキ、カツラなどの巨樹の育つ自然林(ブナ・スギ天然林、トチノキ渓畔林)を保全するなど、希少な野生生物が生息する樹林環境を保全する。 あわせて、渓流に沿った人工林(スギ植林)や荒廃した人工林については、ブナ林やトチノキ渓畔林、ミズナラ林などの落葉広葉樹林に復元し、ヤマネ、モモンガ、ムササビ、サンコウチョウなど広葉樹林に生息する希少な小動物の生息環境を保全する。 I田舎暮らし・農村観光 山里を訪ねる観光 「山の観光」を考える場合、芦津渓谷のような人里離れた秘境域を巡るエコツーリズムも魅力であるが、そのような大自然の有する山地の麓には、静かな山里の風景が開け、山間を流れる清流の環境が見られることも多い。これまで、そのような山里の環境は観光の対象とはされなかったが、古き良き時代の懐かしい日本の原風景が失われゆく中、山里の自然や景観、歴史、生活文化が観光資源として着目されつつある。都会での生活に飽き、静かな山村での「田舎暮らし」に憧れる都市生活者の少なくない。 しかし、その山里も過疎高齢化が進行し、荒廃の道をたどりつつあるとされ、農山村の活性化が求められている。ある意味で山里は都市と農村との交流の舞台であり、グリーンツーリズムのフィールドでもあることから「山の観光」を考える上で興味深い地域であるが、そこは人の生活の場であり、これらオルタナティブ・ツーリズムに対応すべき観光プログラムや仕組みづくりが求められている。 山の自然や風景を楽しむ旅 エコツーリズムやグリーン・ツーリズムなどのオルタナティブ・ツーリズム増加にみられるように、旅や観光のスタイルが団体観光から少人数旅行に推移する中、旅なれた人も多くなり、写真撮影などを目的に一人で山村や美しい自然域を訪ねる個人旅行もその需要が高まることも考えられる。 自然や風景について国民それぞれが自分の趣味や感性に応じた楽しみ方をみにつけてくると、新しい観光文化や環境倫理も生まれてくる。観光に対する個人の考え方もそれぞれによってかわってくる。そうなれば、専門ガイドを必要としないエコツーリズムが普及することや、あるいは、山里や山地で出会う住民や別の旅人が来訪者の質問に答える形で、にわかガイドになってその土地の自然や生活文化について説明する観光交流の形ができることも考えられる。そのためにも温もりのある山里の自然と風景を大切にし、新しい「山の観光」のスタイルを求めていきたい。 戻る 希少野生動植物の保護これまで鳥取県東部および智頭町において生息が確認されている野生生物種から推定すると、芦津渓の渓谷域やそれに連続する森林域では、絶滅が危惧される生物種や希少種の生育生息の可能性が考えられることから、生物調査の結果を踏まえ、芦津渓谷一帯に生息環境を確保する。 希少な植物の保護「レッドデータブックとっとり」などの文献資料によれば、芦津渓谷〜鳴滝山〜東山〜沖ノ山にかけての山地には、絶滅が危惧される植物が複数生育しているとされており、これら希少植物およびその生育環境の保護と保全をはかる。 @ブナ帯に育つ希少植物の保護 鳴滝山およびその周辺域ではブナ・スギ天然林が広く分布し、ブナ帯に育つ植物種が多種生育しており、絶滅が危惧される植物も生育している。これら希少植物が生育するブナ林の環境保全と再生をはかる。 A草原に育つ希少植物の保護 かつて中国山地には広く二次草原(ススキ草原)の分布がみられた。二次草原は、火入れや採草、放牧によって維持されてきた環境であるが、現在、全国的に急激にその面積が縮小しており、二次草原に育つキキョウ、アザミ類などが絶滅に危機にあるとされていることから、傾斜が緩やかな伐採跡地などに二次草原の再生維持をはかる。 B湿生植物群落の保護 芦津渓谷上流には、かつて湿地帯が形成されていたと考えられることから、湿生植物群落の生育可能性を精査するとともに、平坦な谷部や沢筋などに湿生植物が生育可能な湿地の再生をはかる。 2)希少な鳥類の保護 豊かな森林域がみられる芦津渓谷〜鳴滝山〜東山〜沖ノ山にかけての山地には、クマタカやイヌワシをはじめ絶滅が危惧される野鳥も多種生息しており、渓谷に発達する樹林を保全再生するなど、野鳥の生息環境を確保する。 希少な小動物の保護芦津渓谷〜鳴滝山〜東山にかけての山地では、絶滅が危惧される哺乳類、両生・爬虫類も多種生息しており、渓流沿いに発達した渓畔林や広葉樹林を保全するなど、小動物の生息環境を確保する。 利用制限の実施野生生物の保護を考える場合、多くの人が自然域(野生生物の生息域)に入ることによって、ワシタカ類など警戒感の強い野生生物への影響が懸念される。 また、行楽客のゴミや焚き火、自動車の通行は、野鳥や小動物に少なからず影響を与えていると考えられる。 さらには心無い入山者にとる希少な野生生物の採取も予想される。 これらについては、自然保護条例など法令による規制が必要であり、これを運用するにあたっては監視組織も必要となる。 戻る 芦津渓谷![]() そのような秘境域については、多くの人を招き入れ、観光利用をはかるのではなく、本当に山の自然を愛する人に知ってもらい、大切にしてもらいと願っている。 一方で、その貴重さや学術的な価値を多くの人に知ってもらうことで、地域の資源(宝物)として保護保全を考えたり、環境学習の場として活用することも環境保全につながる。 智頭町町民環境会議は、設立以来千代川源流域の環境保全活動に取り組んでおり、過去4回にわたり源流環境シンポジウムを開催し、芦津渓谷の素晴らしい自然について様々な角度から保護保全を呼びかけている。 また、芦津渓谷の巨樹巨木調査にあたっては、鳥取大学とも連携して取り組んでいる。 智頭町町民環境会議では、これまで芦津渓谷に残る秘境域について、その貴重さや学術的な価値を紹介し、地域の資源(宝物)として保護保全することを進めてきた。 2005年6月開催の芦津渓・源流エコツーリズム&環境シンポジウムは、世界的にも珍しいブナ・スギ混交極相林と巨樹渓畔林について、県境を越えた広域的な視点からその森林ビオトープ空間としての位置づけを明確し、源流域森林環境の保護保全や地域資源としての活用について意見交流をはかることを目的に開催した。 戻る 芦津渓谷の巨木群千代川源流をなす芦津渓、鳴滝山、東山には、素晴らしい源流の環境が存在します。美しい渓谷、自然林の中を流れる渓流、数えきれないくらいの滝、ブナと天然スギが混交する原生林、切り立った岸壁、うっそうとした渓畔林、どれをとっても天下一品の大自然です。中でも樹齢数百年のトチノキやカツラ、ブナの巨木群は圧巻である。 そして、これら巨樹の残る源流の森は、イヌワシやクマタカ、ヤマネ、モモンガなど貴重な野生動物の棲息可能性が高いとされている。 このような山地の大自然は、地域の宝であり、全国的にみても貴重な自然遺産です。一方、混迷する経済のもと、多くの山村地域で山地や山林の荒廃が進行しつつある。また、さまざまな開発によって、かつて見られた美しい農山村の自然は次第に失われていっている。大自然(原生林)と身近なふるさとの風景(里地の環境)をネットワークさせ、ビオトープとなる森を再生させることで魅力ある農村づくりを考えている。 戻る 芦津渓谷の巨樹巨木調査氷ノ山後山那岐山国定公園に属する芦津渓谷には、ブナ・スギの極相林や深い峡谷など、里山的な要素の強い中国山地にあって原生的な自然が残り、その奥地には鳥取県下屈指のトチノキやカツラ、スギ、ミズメ、ミズナラ、ブナなどの巨樹の育つ秘境域が存在している。 そのような秘境域については、多くの人を招き入れ、観光利用をはかるのではなく、本当に山の自然を愛する人に知ってもらい、大切にしてもらいと願っている。 一方で、その貴重さや学術的な価値を多くの人に知ってもらうことで、地域の資源(宝物)として保護保全を考えたり、環境学習の場として活用することも環境保全につながる。 智頭町町民環境会議は、設立以来千代川源流域の環境保全活動に取り組んでおり、過去4回にわたり源流環境シンポジウムを開催し、芦津渓谷の素晴らしい自然について様々な角度から保護保全を呼びかけている。 また、芦津渓谷の巨樹巨木調査にあたっては、鳥取大学とも連携して取り組んでいる。 戻る 野生生物のサンクチュアリー氷ノ山後山那岐山国定公園に属する芦津渓谷には、スギとブナが混交する世界でも珍しい原生林が広がる。 その奥地は、トチノキ、カツラなどの巨樹からなる渓畔林が育つ秘境域が存在し、野生生物のサンクチュアリー(聖域)となっている。 ここ芦津渓谷を含む千代川源流域にはイヌワシやヤマネ、オオサンショウウオなど天然記念物をはじめ希少な野生生物が多く生息している。 一方で芦津渓谷の近接域では大規模な山林伐採も進み、生態系への影響が懸念されており、智頭町町民環境会議では、これまで芦津渓谷に残る秘境域について、その貴重さや学術的な価値を紹介し、地域の資源(宝物)として保護保全することを進めてきた。 巨樹の森のサンクチュアリー(聖域)保全事業は、大規模な山林伐採が進む千代川源流域にあって、世界的にも珍しいブナ・スギ混交極相林と巨樹渓畔林の生態系保全ついて、これまで過去3回続けてきた源流環境シンポジウムを継続し、県境を越えた広域的な視点からその森林ビオトープ空間としての位置づけを明確にするとともに、秘境域の自然保護を目的とした自然環境調査を行い、自然保護解説板の設置やホームページを開設することで、伐採のおそれのある自然林のトラスト保存を進めるなど、希少な野生生物が生息する源流域森林環境の保護保全をはかる。 これら活動は、県境を越え源流域に暮らす住民が連携して進める。 智頭町町民環境会議では、これまで芦津渓谷に残る秘境域について、その貴重さや学術的な価値を紹介し、地域の資源(宝物)として保護保全することを進めてきた。 2005年6月開催の芦津渓・源流エコツーリズム&環境シンポジウムは、世界的にも珍しいブナ・スギ混交極相林と巨樹渓畔林について、県境を越えた広域的な視点からその森林ビオトープ空間としての位置づけを明確し、源流域森林環境の保護保全や地域資源としての活用について意見交流をはかることを目的に開催した。 戻る 智頭町鳥取県の東部、中国山地の山間に位置する智頭町は、山陰と山陽・上方(大阪)を結ぶ交通の要衝にあり、古くから街道文化が栄え、町内には古い街道の歴史を伝える文化遺産が多くみられるが、時代の移り変わりとともに、その存在さえ忘れられ、人知れず失われつつあるものもある。加えて、交通の便の悪い山間地では、過疎高齢化の進行により、廃村状態となった集落もみられるなど、古い屋敷や土蔵、茅葺き民家などの文化遺産も年々失われている。 これら智頭町の山里に残る文化遺産は、美しい自然とともに、都市農村交流による新しい地域コミュニティづくりを進める上で大きな魅力であり、「人と自然との共生」や「地球環境時代に求めらるライフスタイル」を考える上で重要な環境資源であることから、これら文化遺産にスポットライトをあて、資源循環型地域づくりを進めることを目的とする。 現代の大量消費・大量廃棄の経済構造を転換させ、「資源循環型社会の構築」を実現するためには、資源浪費型のライフスタイルの見直しが不可欠とされている。山村に残る文化遺産からは「人と自然との共生の歴史」や「先人たちの環境文化」を学ぶことができ、「地球環境時代に求めらるライフスタイル」が見え隠れしていている。 街道の文化遺産にスポットライトをあて、「地球に優しい生活スタイル」について、考え学ぶ環境教育資源(環境教材)として紹介することで、多くの住民が「古き良き時代の環境文化」に関心をもち、これまでのライフスタイルを考え直すような気運が高まるような環境学習プログラムを作成することを目標とする。 あわせて、これら活動は近接する地域と連携して行い、古い街道に残る歴史的遺産や懐かしい風景を大切にして、「資源循環型まちづくり」を進める連携ネットワークを中国地方につくることも目標とする。 美しい自然は人に感動を呼ぶ。懐かしい風景は人に安らぎや落ち着きを与える。 智頭源流シンポジウム ポスター写真 智頭の地図 芦津渓写真 巨樹写真 トレッキング写真 シンポ写真 新田写真 戻る フォーラムちづ源流環境フォーラム開催趣意書 〜テーマ:美しい源流の環境を生かした地域づくり〜 老年期の山地地形からなる中国山地の源流域では、大いなる大自然の中、優れた自然や素晴らしい森林や渓谷の景観が存在する一方で、古くから人の手が入り、人と自然とが共生する温もりのある山村風景や歴史文化がみられます。 このような愛すべき源流地域ではありますが、現在、過疎高齢化や産業構造の変化にともない、かつて見られた美しい山村風景や伝統文化が失われつつあります。加えて、手入れ不足で荒廃した植林地も多くみられ、かつて源流域が有していた国土保全機能や水源涵養機能、保健保養性、生物多様性が低下しつつあります。 このような中、求められているのが住民・NPO等による環境保全の活動でありますが、過疎高齢化が進行している源流町村では、活動する人間が少数固定化し、行政とのパートナーシップをはかるにも情報不足、専門性不足、人材不足などの問題に直面します。 これを解決する方策として、都市農村交流が考えられますが、自然観・価値観の違いや交通距離の問題、生活文化の違いなどから多くの障害も見えてきています。 そこで考えたのが、価値観や境遇を同じくする源流地域同士の環境保全交流です。 幸いにして、県境や町村境という行政的な区域わりは存在するものの、源流域において隣接する町村では、古くから人的・血縁的な交流も多くみられ、お互いの地域や生活文化を知り合える位置にあります。加えて、同様の地域課題や「ふるさとへの思い」を抱いており、山村ならではの温かい人情や、同じ境遇にあるものどうしの連帯感もあります。 今回の「ちづ源流環境フォーラム」は、中国山地に位置し、美しい源流の自然域を有する町村において環境保全活動を展開する個人・団体が鳥取県智頭町・岡山県西粟倉村に集まり、それぞれの活動や「ふるさとの自然」について語り会う交流会です。 この集まりを契機に町村境・県境を越えた大きな源流環境保全の取り組みやネットワークが生まれ育っていくことを希望し、ちづ源流環境フォーラムを開催します。 平成15年9月 智頭町町民環境会議 会長 今倉常光 戻る サンクチュアリー自然林や雑木林の中を流れる清流域とその背後地をオオサンショウウオのサンクチュアリーとして保全することが必要とされる。 それでは、雑木林の下を流れる谷川では、どんな生き物が観察できるのだろうか。 人の手が加わっていない自然の川岸は、草が茂り、木が根を張るなどしており、洪水の度に石や土砂が流されて微妙に水辺の状況の変わることから、細かくみると、複雑な形状となっている。こういったや多様性のある環境がみられるのが、自然の川岸である。雑木林には多くの野鳥や小動物、昆虫が棲み、落葉樹の側を流れる谷川には、水生昆虫や魚の餌となる落ち葉、木から落ちた昆虫などが多く、それを求めてやってくるイタチやカワセミ、オニヤンマなど多様な生態系がみられるなど、自然観察の場としても優れており、一部については、人の立ち入りを制限するとともに、環境学習やエコリーリズムに活用する。 戻る |