オオサンショウウオ生息地をフィールドとした清流自然学校事業

 
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特別天然記念物オオサンショウウオ生息地をフィールドとした清流自然学校事業




真庭遺産研究会


1.活動の背景




対象とする岡山県真庭地域の市街地(旧落合町、旧久世町、旧勝山町)は、岡山県中北部の中国山地と吉備高原に挟まれた小盆地に位 置し、岡山県三大河川の一つ旭川の河畔に発達した町で、古くから高瀬舟の水運で栄えてきた。

このように真庭市南部(落合町、久世町、勝山町)は市街地を旭川が流れており、古くから旭川の水運(高瀬舟)で栄えた町であるこ とから、地域住民は、旭川に対して「熱い思い」と共通の歴史認識をもっており、旭川の水辺を取り込んだ街づくり(都市計画)に期 待する声も多い。

また、旭川水系は、琵琶湖水系に次いで生息魚の種数が豊富で、全国でも屈指の生物多様性に富んだ水系とされ、その上流域は河川そ のものが「特別天然記念物オオサンショウウオ生息地」として国(文化庁)の指定を受けているなど、真庭地域では、特別天然記念物 オオサンショウウオを頂点とする地域固有の生態系が維持されてきたが、豊かな自然が見られた河川水辺の環境は年々悪化しており、 オオサンショウウオについても早急な保護対策が求められている。

とくに、真庭市は、面積の約4割が天然記念物「オオサンショウウオ生息地」に指定されており、固体のみならず、河川を含む流域が 天然記念物になっている。

生息地が天然記念物として地域指定されているのは、全国で岡山県真庭市北部、および岐阜県郡上市と大分県宇佐市の一部の3ヶ所の みである。

このように、真庭地域北部(旧湯原町、旧中和村、旧八束村、旧川上村)は、国によって「オオサンショウウオ棲息地」の天然記念物 指定を受けているが、オオサンショウウオの生態は、地域住民でさえ知る人は少なく、住民にとって縁遠い存在になりつつあり、その 保護組織が育っておらず、河川水辺の生態系や自然景観について、保護保全のための住民活動も必要となっている。

そのため、地域住民の「ふるさとの川」の「思い」が深いうちに、農村において失われつつある清流環境(景観)再生へための組織づ くりや河川水辺の生態系や自然景観について、保護保全のための住民活動を展開させる必要があり、グラウンドワーク真庭を発足させ 、河川および河畔域をフィールドとした環境学習エコツアーなど、環境学習型の観光まちづくりを進めていくこととなった。



2.活動の経緯と目的




このような状況の中、真庭遺産研究会では、「特別天然記念物オオサンショウウオ」および「オオサンショウウオの棲む清流の環境」 を真庭遺産(真庭地域の自然文化遺産)としてスポットライトをあて、保護保全について調査および啓発活動を進めてきた。

これまで真庭遺産研究会として実施していきた活動は、真庭地域における河川生態系の保全を目的とした人と川との共生関係や、河川 改修など工事における住民参加型の川づくりを考えるにあたっての必要な情報の収集である。

あわせて、オオサンショウウオ生息地において、良好な自然環境の残る河川域及びその背後地となる森林域をハンザキ・サンクチュア リー(生態系保全区)としての永続的な保全はかるべく、生物多様性に係る環境調査や清流域をフィールドにした自然学校活動を展開 しており、オオサンショウウオの棲む源流環境を紹介したパンフレットを作成し、源流環境の保全再生について紹介するともに、子ど もたちとその保護者に源流の自然を紹介するエコツアーを試行開催した。

あわせて、2006年夏には、「倉本聡とブナの会」、湯原町旅館協同組合、真庭森林組合などの環境や観光、まちづくりに係わる関係者 と「グラウンドワーク真庭設立準備会」を発足させ、「河川を生かした協働のまちづくり」の活動を展開しており、真庭市(企画政策 課)などと協働して「環境まちづくりセミナー」を2007年より2年連続毎年で開催するとともに、パンフレット(川と真庭遺産を活か した協働型環境観光事業)を作成し、オオサンショウウオをシンボルとした旭川の資源活動を提唱してきた。

さらに、真庭市(林業振興課)と連携し、三平山麓(オオサンショウウオ生息地内の森林伐採跡地)に広葉樹林を再生(ブナを植栽) する活動を実施するなど、流域環境の保全に努力してきた。

本活動は、河川水辺および河畔にみられる自然や美しい風景、歴史文化遺産などの「河の遺産」の有効活用による河川を生かした地域 づくり「かわまちづくり」を目的とし、あわせて、河と人との係わりをテーマとした環境学習の推進による環境共生社会、循環型社会 の構築、河川の観光利用を目的とする。

河川の観光利用では、環境学習プログラムを活かしたリバーツーリズムを進め、地域住民が主体的に参加するグラウンドワーク(協働 )型の観光交流活動を展開していくことで、市民・住民の「ふるさとの川」への関心を高め、清流環境の保全を進めていく。



3.活動の内容および成果




3−1活動の内容




真庭地域を流れる旭川は、国より特別天然記念物オオサンショウウオ生息地に指定されるなど豊かな自然の残る清流河川である。 くわえて、古くから旭川の水運(高瀬舟)で栄えた地域であることから、河畔には多くの歴史文化遺産が残り、文化的で風情のある水 景色がみられる。

これら旭川の水辺および河畔に残る自然や歴史遺産、生活文化を活用した体験メニュー、環境学習プログラムを作成し、ラフティング ボートやカヌーを利用して清流域を巡る体験学習ツアーを開催など、オオサンショウウオの棲む清流環境の保全・再生を目的とした清 流グラウンドワーク型体験環境学習事業を進めた。



(1)オオサンショウウオ生息域での環境学習プログラムの作成調査

旭川の水辺および河畔にみられる河畔林、ワンド域、水辺草原、高瀬舟の発着場、古民家、近代化遺産、巨樹、里山雑木林、水田農村 域、農村集落域など、環境資源や活動のフィールドとなりうる環境について、現地踏査を行い、これらの環境を活用して、河と人との 係わりをテーマとした環境学習プログラムについて検討した。

調査は、晴れの国野生生物研究会など真庭遺産研究会と連携して活動している専門家や団体で結成するネットワーク組織(グラウンド ワーク真庭)でチームを編成し、小串重治氏(大阪産業大学講師、技術士(環境・建設・農業))の指導指導協力のもとに、2008年6月3 日から2009年12月25日の期間、自然景観、野生生物の専門家、環境学習、景観、生態系、建築、都市計画、郷土史、観光交流に詳しい 地元住民の同行のもとに行い、体験学習メニューについて現地検証をおこなった。

1)天然記念物「オオサンショウウオ生息地」での環境資源調査

天然記念物「オオサンショウウオ生息地」(真庭市川上地区・八束地区・中和地区・湯原地区)の河川域およびその河畔域にみられる河 畔林、ワンド域、水辺草原、歴史文化遺産、生活文化、風物詩、里山雑木林、農地(水田と水路)、農村集落など、自然や景観資源、 活動のフィールドとなりうる環境について、現地踏査を行った。

現地調査は、自然景観や野生生物の専門家、地元住民の同行のもとに行い、体験学習メニューづくりと環境保全を目的に現地検証を兼 ねて行った。

調査は、旭川流域(岡山県真庭市)およびその隣接域において、オオサンショウウオが多く生息するとされる水域について、水辺景観 、河川形状、水辺植生、水生生物の生息状況、人の手の加わり方(河川工事の状況など)およびそこに生息するオオサンショウウオの 生態を調査することで、対象水域での生物多様性やオオサンショウウオの生息環境を把握し、環境学習プログラム作成の基礎資料とし た。

清流環境・自然文化遺産調査は、学識経験者および地域住民の参加協力のもとに実施し、ここをフィールド活用した環境学習プログラ ムを検討した。オオサンショウウオ生息地環境調査は、学識経験者(岡田純氏、瀬島義之ほか)および地域住民の参加協力のもとに実施 し、真庭地域におけるオオサンショウウオの生息状況、繁殖環境および生態を把握した。

2009年度における調査の実施状況は、以下のとおりである。

4月18日専門家(岡田純氏、瀬島義之氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
4月16日清流環境・自然文化遺産(湯原地区)
4月24日専門家(岡田純氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
4月28日清流環境・自然文化遺産調査(川上地区・八束地区・中和地区)
5月2日専門家(岡田純氏、瀬島義之氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
5月3日専門家(岡田純氏、瀬島義之氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
5月7日清流環境・自然文化遺産調査調査(川上地区・八束地区・中和地区)
5月9日専門家(岡田純氏、瀬島義之氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
5月13日専門家(岡田純氏、瀬島義之氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
5月14日専門家(岡田純氏、瀬島義之氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
5月18日専門家(岡田純氏、瀬島義之氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
5月19日清流環境・自然文化遺産調査(川上地区・八束地区・中和地区)
5月21日清流環境・自然文化遺産調査(川上地区・八束地区・中和地区)
5月26日清流環境・自然文化遺産調査(湯原地区)
5月29日清流環境・自然文化遺産調査(真庭市南部地域)
6月1日清流環境・自然文化遺産調査(川上地区・八束地区・中和地区)
6月5日清流環境・自然文化遺産調査(真庭市南部地域)
6月9日専門家(岡田純氏、瀬島義之氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
6月12日清流環境・自然文化遺産調査(川上地区・八束地区・中和地区)
6月13日清流環境・自然文化遺産調査(湯原地区)
6月20日専門家(岡田純氏、瀬島義之氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
6月26日専門家(岡田純氏、瀬島義之氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
7月5日清流環境・自然文化遺産調査(真庭市南部地域)
7月17日清流環境・自然文化遺産調査(真庭市南部地域)
7月30日専門家(岡田純氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
7月31日清流環境・自然文化遺産調査(川上地区・八束地区・中和地区)
8月1日清流環境・自然文化遺産調査(真庭市南部地域)
8月7日専門家(岡田純氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
8月17日清流環境・自然文化遺産調査(湯原地区)
8月20日専門家(岡田純氏、瀬島義之氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
8月21日清流環境・自然文化遺産調査(湯原地区)
8月22日清流環境・自然文化遺産調査(川上地区・八束地区・中和地区)
8月28日専門家(谷幸三ほか)と清流環境・自然文化遺産調査(真庭市南部地域)
8月31日清流環境・自然文化遺産調査(日南地区)
9月4日清流環境・自然文化遺産調査(川上地区・八束地区・中和地区)
9月10日清流環境・自然文化遺産調査(湯原地区)
9月11日専門家(岡田純氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
9月15日清流環境・自然文化遺産調査(川上地区・八束地区・中和地区)
9月17日清流環境・自然文化遺産調査(真庭市南部地域)
9月19日専門家(岡田純氏、瀬島義之氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
9月20日清流環境・自然文化遺産調査(川上地区・八束地区・中和地区)
10月5日清流環境・自然文化遺産調査(湯原地区)
10月11日清流環境・自然文化遺産調査(川上地区・八束地区・中和地区)
10月15日専門家(岡田純氏、瀬島義之氏ほか)とオオサンショウウオ生息地環境調査
10月28日清流環境・自然文化遺産調査(川上地区・八束地区・中和地区)

このほか、4月〜10月:岡田純氏(鳥取大学)にオオサンショウウオを含む両生類、小串重治(グリーンフロント研究所)に植生、里 藤信義、山本善民(晴れの国野生生物研究会)に植物相、谷幸三(晴れの国野生生物研究会)に水生生物ほか生物全般、谷口真一(晴 れの国野生生物研究会)が野鳥を担当して生息環境調査を実施した。

2)河の遺産(河川およびその周辺にみられる自然文化遺産)調査

真庭地域全域(とくに真庭市南部)を対象に、河川水辺および河畔にみられる河畔林、ワンド域、水辺草原、高瀬舟の発着場、古民家、 近代化遺産、巨樹、里山雑木林、水田農村域、農村集落域など、環境資源や活動のフィールドとなりうる環境や「河の遺産(河川およ びその周辺にみられる自然文化遺産)」について、現地踏査を行い、これらの環境を活用して、河と人との係わりをテーマとした環境 学習プログラムについて検討した。

河の遺産調査は、晴れの国野生生物研究会(代表:谷幸三氏)など真庭遺産研究会と連携して活動している専門家や団体で結成する ネットワーク組織(グラウンドワーク真庭)メンバーでチームを編成し、2008年6月3日から2009年11月25日の期間、自然景観、野生 生物の専門家、環境学習、景観、生態系、建築、都市計画、郷土史、観光交流に詳しい地元住民の同行のもとに行い、体験学習メニュ ーについて現地検証を行った。

調査地は、真庭地域全域(真庭市および新庄村)および、その隣接域とし、旭川をはじめ、真庭地域を流れる新庄川、月田川、備中川、 河内川、目木川、余川、初和川、植杉川、山乗川、明連川、湯船川、粟谷川、鉄山川などの河川水辺および湯原湖、旭川湖などの湖水 、河畔にみられる河畔林、ワンド域、水辺草原、高瀬舟の発着場、古い家並み、民家、近代化遺産、巨樹など景観資源とあわせ、渓谷 ・渓流域、河川近くの里山雑木林・牧野・草原、河畔に広がる水田農村域、農村集落域、ため池など、環境資源や活動のフィールドと なりうる環境について調査し、河の遺産(河川周辺環境文化・景観資源)のデータベース作成調査を兼ねて行った。

3)環境学習フィールドの候補地調査

河の遺産(河川周辺環境文化・景観資源)調査と平行して、2008年6月10日から2009年12月25日の期間、真庭地域を流れる旭川とそ の支流河川について、現地踏査やフィールド試験を行い、環境学習の場として適地となる水辺環境・河畔環境を選定した。

現地踏査は、真庭自然観察する会(代表:辻野誠三氏)と連携し、これまで水辺自然観察会など環境学習イベントを開催してきた河川 水辺20箇所を中心に実施し、オオサンショウウオ生息環境調査で行った真庭地域北部の河川環境情報を参考に新たな環境学習適地も求 めた。これら現地踏査とあわせて、鳥取県自然体験塾(代表:長谷川浩司氏)、西村忠彦氏(蒜山ガイドクラブ)の協力のもと、カヌ ー、ラフティング(渓流下り)、リバートレッキング、シャワークライミングなど自然体験型学習イベント開催についてその適地となる 水辺を選定すべくフィールド試験を実施した。

この候補地調査活動の中で、2008年6月30日にラフティングボートとカヌーをつかい、蒜山盆地下流から湯原湖にかけての7Kmの区間 の河川水辺域での川下りを行いながらの自然観察と、湯原湖でのカヌーによる野鳥観察について、フィールド試験を実施した。



(2)清流環境を活用した環境学習プログラム作成

岡山県北部の真庭地域では、河川を中心に豊かな生態系がみられることから、オオサンショウウオの棲む清流域の環境を活用して、「 人と自然」、「人と川」との係わりをテーマとした環境学習プログラムを作成した。

2009年度における作業の実施状況は、以下のとおりである。

1)オオサンショウウオをシンボルにした環境学習プログラムの作成

環境学習プログラムの作成にあたっては、オオサンショウウオの棲む清流環境の保全・再生を目的とした清流グラウンドワーク型体 験環境学習事業を進めるとしたことから、そのフィールドとなる環境をハンザキ・サンクチュアリーを中心に求めた。

ここでいう「ハンザキ」とは、オオサンショウウオの真庭地域での呼び名(地方名)である。体験型環境学習フィールドとして、ハン ザキ・サンクチュアリーの中から湯原湖畔上流域、津黒川上流域、山乗川流域、苗代谷川上流域の4箇所を清流自然学校のウォーター グランド(水の校庭)として選定し、自然公園的な土地利用を検討するとともに、真庭市南部についても、水田農村域をゆっくり流れる 旭川の河畔域に残る古民家や古い家並みなどの自然文化遺産の環境活用に着目し、グリーンツーリズムやエコツアーなどで利用できる よう体験型のプログラムづくりを進めた。

この作業は、計画では2009年4月〜12月であったが、オオサンショウウオの研究者や学識経験者、真庭市教育委員会、鳥取大学農学 部付属フィールドサイエンスセンター、地域住民との協議の中で進めたため、2010年2月まで期間を延長して実施した。

環境学習プログラムの作成にあたっては、以下に示す事業への受講参加や協議を経ており、日野・大山地域(日野川流域)と真庭地域 (旭川流域)が情報交流・活動連携を進める中で実施し、11月25日にふるさと清流自然学校(みんなでハンザキ大明神詣で)とわせて、 オオサンショウウオをシンボルに清流の環境を活かした地域づくりについて意見交流をはかっている。

9月30日真庭市教育委員会との打合せ
10月16日真庭市教育委員会との打合せ
10月23日真庭市教育委員会との打合せ
11月25日栃本先生、桑原先生、岡田先生ら学識経験者を交えた意見交換会
12月10日中越教授、岡田教授、佐野教授、日置教授ら学識経験者を交えた意見交換会
12月14日大山蒜山地域の環境活動家、エコツーリズム関係者を交えた意見交換会
12月24日真庭市教育委員会との打合せ
2月16日大山蒜山地域の環境活動家、エコツーリズム関係者を交えた意見交換会
2月28日大山蒜山地域の環境活動家、エコツーリズム関係者を交えた意見交換会

2)河の遺産を活用した環境学習プログラムの検討

河の遺産を活用した環境学習プログラムの検討は、河の遺産(河川周辺環境文化・景観資源)調査や環境学フィールド候補調査で得ら れた情報をもとに、晴れの国野生生物研究会(代表:谷幸三氏)、真庭自然観察する会(代表:辻野誠三氏)、鳥取県自然体験塾(代 表:長谷川浩司氏)の指導協力を得ながら実施し、これまでの自然観察会型のメニューに加え、カヌー、ラフティング(渓流下り)、リ バートレッキング、シャワークライミングなど自然体験型メニューや歴史・景観自然探訪型のメニューを取り入れ、河の遺産(河川周 辺環境文化・景観資源)を訪ねるエコツアー型の環境学習プログラムを試作した。

エコツアー型の環境学習プログラムの試作にあたっては、探訪コースをフィールドを河川水辺周辺に限定せず、その流域となる森林 域、牧野域、里山域、水田農村域もツアーコースに含め、広く流域を巡るツアー型プログラムづくりに努めた。

3)ふるさとの川についての住民意識調査

真庭地域住民の河川環境についての意識を把握し、今後、河の遺産を活用した環境学習プログラムを発展充実させること、および、旭 川をはじめ真庭地域を流れる河川への関心を高め、清流環境の保全再生活動を促進することを目的に、小串重治氏(環境・建設・農業 部門の技術士)、森野真理氏(吉備国際大学)の協力のもとに、真庭地域全域の住民を対象に電話帳名簿からランダムに1,000人を抽 出し、河川環境住民意識調査(ふるさとの川についての住民アンケート調査)を実施した。



(3)環境学習プログラムを活用した実証イベントの開催

作成した環境学習プログラムを活用した体験学習ツアーや環境学習会などの実証イベントを開催し、環境学習プログラムの完成度を高 めるともに、清流環境の保全活動と環境学習を組み合わせた清流グラウンドワーク型体験環境学習ツアーを開催した。

体験学習ツアーは、ラフティングやカヌーなどで清流域を探検する冒険要素やアクティビティの要素を取り入れ、「ふるさと清流自然 学校」の事業化を進めた。

1)2008年度の環境学習実証イベントの開催状況

夏休みを利用し、2008年7月30日、8月21日に河の遺産を活用した環境学習実証イベントとして、旭川上流域、源流域および湖水域を フィールドに「カヌー体験」大山蒜山子どもエコツアーを開催した。



「カヌー体験」大山蒜山子どもエコツアー

「カヌー体験」大山蒜山子どもエコツアーは、小学校高学年を対象に真庭地域および大山蒜山地域の優れた自然と景観、文化遺産を巡 る自然体験型環境学習ツアーとして開催し、専門インストラクター(鳥取県自然体験塾)の指導協力のもとに、子どもカヌー教室を行 い、ラフティング用のゴムボートに乗って、湯原湖上流の旭川(の自然を観察するともに、西村忠彦氏(蒜山ガイドクラブ)の案内の もと、バスで緑美しい蒜山高原の牧場・草原、奥大山のブナ林・湿原、山乗渓谷などの大自然を訪ね、山乗渓谷ではリバートッレキン グ、シャワークライミングも体験メニュー加えた。

湯原湖上流での子どもカヌー教室および山乗渓谷でのリバートッレキングは、子どもとその保護者を対象にした初心者向けのものとし た。

「カヌー体験」大山蒜山子どもエコツアーは、夏休みを利用し、2008年7月30日、8月21日の2日間の開催とし、その広報は、真庭地 域内の全小学校、全中学校を訪問し、各学校を通じて、全校の児童・生徒に案内チラシを配布するとともに、市内ケーブルを通じて案 内をはかり、2008年7月30日に21名、8月21日に24名の児童・生徒の参加を得ることができた。

2)2009年度の環境学習実証イベントの開催状況

2009年度、実証イベントは、地域住民や環境NPO、関係行政機関と連携し、オオサンンショウウオ生息地の環境保全を目的とした「ふ るさと清流自然学校」として開催している。自然体験型学習ツアーは、専門家の同行のもとにオオサンショウウオ生息地を訪ねる現地 見学会方式で実施するともに、7月〜10月にかけて、渓流歩きや川遊び、ラフティングボート、カヌーを利用した自然観察会方式でも 実施した。



(4)環境学習を推進する組織づくり

実証活動とあわせ、鳥取県日野川地域などと連携し、環境シンポジウムや交流フォーラムを開催することにより、広域的な清流ふるさ と自然学校ネットワーク組織づくりを進める。指導者の発掘・育成は、夏休みを利用し、学生などを対象者にインストラクター養成野 外セミナーを開催する。

1)2008年度の組織・ネットワークづくりの実施状況

河川の自然や歴史を活かし、河川水辺と河畔域をフィールドに環境学習を推進する組織づくり(ネットワーク組織であるグラウンドワ ーク真庭の連携強化)を進めることを目的に、ふるさとの川を生かした体験学習について語るフォーラムを開催した。フォーラムは、 2008年10月11日(土)〜13日(月)に、日本グラウンドワーク協会の協力のもとに開催した「河川環境まちづくり交流会・ふるさと体験ツ アー」の中で、10月11日(土)に河川環境まちづくり交流会として開催し、その夕方に湯原温泉で意見交流会を開催することができた。

なお、10月11日(土)のフォーラム(河川環境まちづくり交流会)の開催にあたっては、川を活かして体験学習に取り組む先進事例を紹 介することによって、参加者が体験学習事業について具体的イメージを描きやすくするようつとめ、チラシ・ポスターの配布、行政広 報誌掲載などの広報活動により、真庭地域住民(市民)を中心に103名の参加者を得ることができた。 ふるさとの川を生かした体験学習について語るフォーラム(河川環境まちづくり交流会―川を生かした環境まちづくり―)の概要は以 下のとおりであった。



河川環境まちづくり交流会―川を生かした環境まちづくり―

@開催日時および会場:10月11日(土)午後2時〜5時、勝山文化センター(真庭市勝山)
A実施内容:事例報告
報告者:大西幹夫氏(NPO法人グラウンドワーク西神楽)
:土居敬氏(幡多広域観光協議会)
講演(テーマ:川を活かした環境学習型地域づくり)
講師:池田満之氏(岡山市京山地区ESD推進協議会会長)
B実施体制:主催:真庭遺産研究会、グラウンドワーク真庭設立準備会
共催:真庭市、財団法人日本グラウンドワーク協会、真庭森林組合、社団法人中国建設弘済会、農事組合法人笹向営農組合、グラウン ドワーク大山蒜山、ёもんクラブ、倉本聰とブナの会

C主たる対象者:一般市民(住民)、環境NG0・NPO、行政職員

3)環境学習型の河川観光ツアーの開催

河の遺産(河川周辺環境文化・景観資源)調査と平行して、真庭地域を流れる旭川とその河畔域をフィールドとした体験学習型の河 川エコツアー(ふるさと体験ツアー)を開催し、旭川"河の遺産"を生かした環境学習プログラム活用まちづくり事業を進めた。

体験学習型の河川エコツアーは、「河川環境まちづくり交流会・ふるさと体験ツアー」の中で、田舎暮らし体験交流ツアーおよび川舟 くだり自然体験ツアーとして、2008年10月12〜13日の期間を開催した。

10月12〜13日の体験ツアーは、「ふるさとの川」、日本の河川について、望まれる姿を考えながら、河川周辺の歴史・文化・自然・ 景観等を「河の遺産」として観光利用・資源活用をはかるとともに、ふるさと真庭の川や農業、自然を活かした体験学習型の地域づく りについて学び、「ふるさとの川」をシンボルとした緑豊かで美しい地域づくりを促進することを目的に実施した。



田舎暮らし体験交流ツアー

田舎暮らし体験交流ツアーは、10月12日(日)午前9時〜午後5時に、真庭地域で水や農地、民家を活かして「ふるさとづくり」に取り 組む人や地域を訪ねるバスツアー(見学は、古見・平松地区、勝山・月田地区、新庄村大原地区)として実施した。

このツアーでは、樋口勲(笹向営農組合)、山口周治、永嶋(ёもんクラブ)、山谷吉孝(真庭遺産研究会)、三木美代子(勝山ボランティ アガイド)、清水正男(古見地区世話人)が講師・インストタクターを努め、バスで勝山・月田地区、古見・平松地区、新庄村大原地区 を案内し、河川・河畔風景、川と農村生活文化、川と高瀬舟の水運、山里の田舎暮らしライフを体験メニューにした環境学習プログラ ム内容で実施した。

10月12日(日)の田舎暮らし体験交流ツアーには、田舎暮らしに憧れる都市生活者など22名の参加者があった。



川舟くだり自然体験ツアー

川舟くだり自然体験ツアーは、10月13日(祝日)午前9時〜午後5時に、真庭市蒜山下見、蒜山初和、湯原温泉、蒜山上徳山の湖水(ダ ム湖)、河川水辺、草原牧野をフィールドにふるさとの川と自然を巡る体験型のエコツアーとして真庭市内の子ども(およびその保護者 )を対象に実施し、真庭市内の親子など20名の参加者があった。

河川水辺や湖水域をフィールドとした環境学習プログラムは、鳥取県自然体験塾(代表:長谷川浩司)の協力のもと、専門インストラク ターによるカヌーやラフティングの初心者教室を開催し、ゴムボートで川下りを楽しみながら、湯原湖や旭川上流の自然を観察する内 容とした。

ラフティング体験教室で利用した水域は、6月30日のフィールド試験で環境学習の場として適地と評価された湯原湖上流の旭川で、カ ヌー体験教室は、湯原温泉街に近い湯原ダム第二堰堤の水域を利用した。

これら水辺での体験環境学習とあわせて、草原の植生と生態系について詳しい小串重治(環境・建設・農業部門の技術士)を講師インス トラクターの案内のもと、バスで緑美しい蒜山高原の牧場・草原、渓谷などの自然を訪ねた。

2)2009年度の組織・ネットワークづくりの実施状況

実証活動とあわせ、鳥取県日野川地域などと連携し、環境シンポジウムや交流フォーラム、意見交換会を開催することにより、広域的 な清流ふるさと自然学校ネットワーク組織づくりを進めており、12月9日、10日にオオサンショウウオの棲む人里(里地・里山)の景観 保全を目的に、日野川・旭川流域交流の文化的景観について語る大山蒜山ミーティング(セミナー・シンポジウム)を開催した。

ここでいう文化的景観とは、文化庁のいう「文化的景観」のことで、人の暮らし、生活の営み、生産活動(主に農林漁業)によって形 成された地域景観である。

中国地方では、のどかな農村風景の中、人里を流れる河川にオオサンショウウオが生息しており、シンポジウムでは、人里を流れる川 (里川)とその周囲に広がる里地・里山の昔懐かしい景観・風景の保全を進めることで、人とオオサンショウウオが共存する生物多様性 の高い生息地環境の永続的な保全をはかることが話し合われた。

今回の日野川・旭川流域交流の大山蒜山ミーティング(セミナー・シンポジウム)は、実行委員会方式で開催しており、広島大学の中 越信和教授を講師に、地元鳥取大学の佐野淳之教授、岡田昭明教授、日置佳之教授を報告者として基調講演、研究報告、意見交換、現 地検討会(バスツアー方式)を行った。

実行委員会には、伯耆町長を委員長に、大山蒜山地域の3市(真庭市、米子市、倉吉市)、4町(伯耆町、大山町、江府町、琴浦町)のほ か、環境保全活動団体、地域づくり系団体、観光関係機関が委員会に加わっており、真庭遺産研究会はグラウンドワーク大山蒜山とと もに事務局およびシンクタンク的な役割を担っている。

この大山蒜山ミーティング(セミナー・シンポジウム)に先立って、11月25日には、ふるさと清流自然学校(みんなでハンザキ大明神詣 で)とわせて、オオサンショウウオをシンボルに清流の環境を活かした地域づくりについて意見交流をはかっている。11月25日の意見 交流会には、安佐動物公園の桑原一司氏、足利和英氏、日本ハンザキ研究所の栃本武良氏、鳥取大学の岡田純氏など日本を代表するオ オサンショウウオの専門家も参加している。

これらの交流活動は、日野・大山地域(日野川流域)と真庭地域(旭川流域)が情報交流・活動連携を進める中で準備および実施して おり、本活動により、オオサンショウウオや昔懐かしい農村風景を地域資源にした日野川・旭川流域交流の動きが生まれている。

さらに、交流活動とあわせ、指導者・インストラクターの発掘・育成も進めており、8月6〜8日に九州中央自然学校やグラウンドワ ーク大山蒜山と連携し、鳥取県江府町(日野川流域)において、RAC(川に学ぶ体験活動協議会)の指導者講習会を開催した。

7月6〜8日RAC(川に学ぶ体験活動協議会)指導者講習の開催
9月5〜6日RAC(川に学ぶ体験活動協議会)全国大会(広島市)への参加
9月26〜29日全国草原サミット・シンポジウム(広島県北広島町)への参加
10月3〜4日オオサンショウウオ研究・保護の全国大会(鳥取県日南町)への協力
12月9日住民啓発イベント(文化的景観フォーラム・シンポジウム)
12月10日住民啓発イベント(生息地での現地検討会)
(5)環境学習冊子・ホームページ、報告書の作成

河の遺産(河川周辺環境文化・景観資源)調査やフィールド試験により、環境学習の場として適地とされた水辺環境・河畔環境、およ び、環境学習プログラムを活用することで、環境学習ツアーやエコツーリズムのフィールドとなる水辺環境を紹介した写真冊子型のパ ンフレット(ふるさと真庭・川と田舎暮らしの旅ー川と真庭遺産を活かした協働型環境観光事業ー)を10,000冊作成し、関係機関などに 配布している。

この写真冊子型のパンフレットで紹介した内容および報告書については、ホームページを開設し、平成22年度より公開し、旭川の水辺 および河畔域をフィールドにした環境学習活動およびリバーツーリズムを推進する。



3−2活動の成果




(1)オオサンショウウオ生息域での環境学習プログラムの作成調査

旭川の水辺および河畔にみられる河畔林、ワンド域、水辺草原、高瀬舟の発着場、古民家、近代化遺産、巨樹、里山雑木林、水田農村 域、農村集落域など、環境資源や活動のフィールドとなりうる環境についての調査は、河の遺産(河川周辺環境文化・景観資源)のデ ータベース作成調査を兼ねて行い、現地踏査やフィールド試験を行なったことで、環境学習の場として適地となる水辺環境・河畔環境 を34箇所を「まにわ清流自然学校ウォーターグランド」として選定し、まにわ清流自然学校ファイル(台帳)としてデータベース化(修 正中)することができた。

環境学習プログラムは、この「まにわ清流自然学校ウォーターグランド」ごとに個別に作成し、まにわ清流自然学校ファイル(台帳)は 、それぞれのウォーターグランドについて自然環境や景観、歴史を活かした環境学習プログラムおよび体験メニューを紹介するととも に、各ウォーターグランドにおいて講師インストラクターとなる人材もあわせて紹介するものであったことから、このファイル(台帳) を活用することで、河川を活かした環境学習ツアーや河川エコツーリズムのツアープログラム作成にも対応することができるようにな った。

また、現地踏査により、これまで人が近づきにくい場所として、環境学習はおろか、あまり知られていなかった美しい水辺空間を「ま にわ清流自然学校ウォーターグランド」に選定し、真庭市住民などに広く紹介することができた。

とりわけ、フィールド試験を行った湯原湖およびその上流の旭川は、湯原・奥津県立自然公園に指定され、ヤナギ水辺林やシデやケヤ キ、コナラからなる落葉広葉樹林(河畔林)など豊かな水辺の自然が残されており、ヤマセミ、カワセミなどの野鳥が多く生息するほ か、特別天然記念物オオサンショウウオの生息地に指定されているが、水辺に近づきにくい環境にあり、これまで、自然観察会などの 環境学習のフィールドとして利用されていなかったが、カヌーやラフティング用のゴムボートを活用する自然体験メニューを加えるこ とによって、環境学習型エコツアーを実施する上で適した環境であることがわかった。

このため、湯原湖上流の河畔域(湖畔域)について、草刈り整備や、指定外来生物のアレチウリの除去(刈取り・焼却)を行い、「まにわ 清流自然学校ウォーターグランド」としての環境を整え、この場所は活動拠点に、2008年7月30日、8月21日の2日間に「カヌー体験 」大山蒜山子どもエコツアーを開催するとともに、10月13日に開催した川舟くだり自然体験ツアーの終着地点として利用することがで きた。

また、旭川の支流山乗川の上流(山乗渓谷)は、深い峡谷をなし、県道に近接しながらも秘境的な環境にあったため、美しい渓流の環境 がみられるにもかかわらず、その奥地の渓谷はあまり知られておらず、環境学習に利用されていなかったが、蒜山ガイドクラブなどの 現地ガイドのもとに渓流トレッキングやシャワークライミングなどの源流探検が可能なため、「まにわ清流自然学校ウォーターグラン ド」として選定し、7月30日、8月21日の「カヌー体験」大山蒜山子どもエコツアーにおいても活用することができた。



現地確認で選定された「まにわ清流自然学校ウォーターグランド」

まにわ清流自然学校ウォーターグランド
地区名
(旧町村名)
体験学習のフィールド
プログラムの内容
1.新庄地区@不動滝と周辺山里域
A新庄宿と新庄川
B野土路川と周辺山里域
滝壺での川遊び・山村体験など
川と宿場の歴史文化探訪など
川遊び・農村生活文化体験など
2.美甘地区@美甘渓谷と周辺山里域
A新庄川と周辺水田農村域
B鉄山川と周辺山里域
渓流での自然観察・山里探訪など
川と農村生活文化・農業体験など
清流と山里の生活文化体験など
3.川上地区@旭川源流の朝鍋山麓域
A明連川上流域
B旭川源流と高原台地域
C湯船川上流域
源流探検・牧野の自然体験など
源流探検・川遊び体験など
源流探検・森林教室など
源流探検・草原の自然体験 など
4.八束地区@蒜山原を流れる旭川ラフティング体験・水辺自然観察など
5.中和地区@山乗渓谷と滝群、渓畔林
A湯原湖バックウォーター
B下和川ながとろ一帯
C津黒川と周辺里山域
源流探検・渓流トレッキングなど
カヌー体験・野鳥観察など
清流と里山の自然体験など
オオサンショウウオ生息地 探訪など
6.湯原地区@粟谷川上流の清流域
A鉄山川と櫃ヶ山北麓域
B真賀温泉付近の旭川
C湯原温泉街と湯原湖第二堰堤
清流と山里の生活文化体験など
オオサンショウウオ生息地探訪など
ラフティング体験・水辺自然観察など
カヌー 体験・温泉地探訪など
7.勝山地区@勝山の町並みと旭川
A神庭の滝とその渓谷域
B月田の家並みと月田川
C月田川上流の山里域
D竜宮岩と周辺農村域
高瀬舟と町並みの歴史探訪など
清流と渓谷の自然体験など
川と古い民家の生活文 化体験など
小川と山里の生活文化体験など
8.久世地区@目木川と周辺水田農村域
A余川と周辺山里域
B目木川と出雲街道一帯
C草加部付近の旭川
川遊び・農村の生活文化体験など
清流と山里の生活文化体験など
清流と街道の歴史文化探訪など
川舟体験 ・水田農村体験など
9.落合地区@古見・平松の集落域と旭川
A河内川と周辺山里域
B関川上流の山里域
C旦土付近の旭川と旦土川
川舟体験・水田農村体験など
小川と山里・里山の自然探訪など
小川と山里・里山の自然探訪など
川舟体験・水辺の自然観察など
10.北房地区@備中川ホタル発生地と水田域
A阿口池と周辺山里域
ホタル観察・水田農村体験など
ため池と里山の自然体験など


さらに、プログラム作成にあたり実施した河川まちづくりアンケート調査(ふるさとの川についての住民意識調査)により、真庭地域住 民の河川に対しての意識が30才代以下で急に低くなる傾向にあることがわかり、今年度(平成21年度)より本研究会で進めている郷土検 定のテキストづくりにおいて、環境学習プログラムを活用した真庭の河川環境を巡る「真庭検定ふるさとの川ツアー」などの啓発イベ ントを実施し、広く地域住民の河川環境への関心を高めていくこととなった。



(2)環境学習プログラムを活用した実証イベントの開催

「まにわ清流自然学校ウォーターグランド」をフィールドに、環境学習プログラムを活用し、2008年7月30日、8月21日の2日間に「 カヌー体験」大山蒜山子どもエコツアーを開催したことで、地元小中学校や河川環境の保全に取り組む住民・NPOなどとの連携が深ま り、学習プログラムの内容も充実することができた。また、環境学習を組み合わせた河川の環境観光ツアーとして、10月12日に田舎暮 らし体験交流ツアー、10月13日に開催した川舟くだり自然体験ツアーを開催することで、ふるさとの川に関心のある住民市民を中心に 多くの賛同者を得ることができ、環境学習を推進する組織づくりを進めることができた。

2009年度、実証イベントは、地域住民や環境NPO、関係行政機関と連携し、オオサンンショウウオ生息地の環境保全を目的とした「ふ るさと清流自然学校」として開催している。自然体験型学習ツアーは、専門家の同行のもとにオオサンショウウオ生息地を訪ねる現地 見学会方式で実施するともに、7月〜10月にかけて、渓流歩きや川遊び、ラフティングボート、カヌーを利用した自然観察会方式でも 実施した。

平成21年度ふるさと清流自然学校

実施日
清流環境を活用した環境学習プログラム
対象河川
参加者数
5月24日春の小川で生き物観察・谷幸三教室山家川・月田川24人
6月4日渓谷の森歩き・里山の植物観察白賀川・湯船川23人
6月14日里山の水辺巡り・モリアオガエルの観察津黒川・下和川26人
7月28日カヌーで湖畔の森探検・高原の牧場歩き旭川・湯原湖20人
8月2日夏の川遊び・田んぼの畦道歩き自然観察船谷川・粟谷川28人
8月4日カヌーで湖畔の森探検・高原の牧場歩き旭川・湯原湖18人
8月8日峡谷の清流で夏体感・ブナの森歩き本谷川・山乗川27人
8月12日滝巡り渓谷探検トレッキング山乗川・植杉川14人
8月29日夏の渓流で生き物観察・谷幸三教室木谷沢・明連川15人
9月10日渓谷の森歩き・里山の植物観察白賀川・神庭川21人
9月17日カヌーで里川の旅・田舎暮らし生活体験旭川・日野川19人
10月4日流域交流ハンザキ調査・里川の散歩会旭川・日野川29人
10月12日高原で川下り水辺自然教室・魚の観察旭川・湯原湖20人
11月3日清流と草原、ブナ林を巡るバスツアー苗代谷・内海谷24人
11月25日みんなで参拝・ハンザキ大明神旭川・鉄山川19人


これら実証イベント開催とあわせ、グラウンドワーク真庭準備会と共催で、10月11日(土)にフォーラム(河川環境まちづくり交流会) を開催し、北海道、高知県、県内(岡山市)において川を活かして体験学習に取り組む先進事例を紹介することで、川を活かした環境学 習を推進する体制づくりについても話しが発展し、川を活かしたまちづくりや清流環境保全への機運が高まった。

グラウンドワーク真庭準備会は、真庭地域において活動するインストラクター(環境学習の指導者)およびサポーター(応援者・補助者) 、環境ボランティア、地域づくり団体、地元協力者(農家等)などが連携して2006年に発足させてた環境まちづくりを進めるネットワー ク組織で、この組織を中心に、川を活かしたまちづくりや清流環境保全を推進すべく、「グラウンドワーク真庭設立準備会」から「グ ラウンドワーク真庭」に改名してNPO法人各へ取得を進めることになった。

なお、2008年10月11日(土)〜13日(月)に開催した「河川環境まちづくり交流会・ふるさと体験ツアー」は、充実した講演内容やツアー ・イベント内容であり、また、地元自治体をはじめ、多くの団体からの参加者があり、河川を生かした環境観光まちづくりの機運を大 きく高めることができた。

また、課題となった内容として、水難防止の安全対策があった。主催者側は同時期に他の主催行事もかかえており、実働スタッフの人 員不足および共催団体との連携も十分に機能しない可能性があったため、川でのイベント開催にあたっては、レスキュー3に資格者を 多く有する鳥取県自然体験塾(代表:長谷川浩司)の指導協力のもとに、安全対策を講じた。この経験を含め、現在は主要なメンバーが RAC(川に学ぶ体験活動協議会)の救命救助講習を受講するなど、水難防止の安全対策を十分確保すべく体制づくりを進めている。



(3)環境学習冊子・ホームページ、報告書の作成

河の遺産(河川周辺環境文化・景観資源)調査、および、真庭地域の水辺環境を紹介した写真冊子型のパンフレット(ふるさと真庭・ 川と田舎暮らしの旅ー川と真庭遺産を活かした協働型環境観光事業ー)を10,000冊作成し、配布したことにより、真庭地域住民に郷土 の自然や歴史、生活文化を再発見し、これら真庭地域の河川環境、および、自然や歴史文化、景観資源を掘り起こし、広く普及しよう と動きが生まれ、今年度(平成21年度)より郷土検定のテキストづくりを行うことになった。

あわせて、新たに「まにわ清流自然学校ウォーターグランド」を紹介した冊子や報告書、ホームページを作成し、真庭地域を流れる河 川および河畔の景観をよくするグラウンドワーク活動を継続発展させるとともに、定期的に河川を生かした環境学習イベントや環境観 光ツアーを開催することとなった。