真庭自然を観察する会

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真庭自然を観察する会




設立 1996年8月
(代表者名) 真庭自然を観察する会 会長  辻野誠三
〒717-0502 岡山県真庭市蒜山富掛田654-32
電話番号 0867-66-2287 FAX 0867-66-2287

代表・・・・辻野誠三(会長)
団体の役員・・・・実村しな代(副会長)、栗田雅文(事務局長)、宮本 繁(幹事)
主な構成員・・・・池田弘昭、増田 茂、上島敬一、岡康弘、大島正樹、山谷吉孝、
高田尚三、辻騏一郎、柴田忠昌、西村忠彦、岡田純、芦立紘一ほか

真庭自然を観察する会(旧名:落合町自然を観察する会)は、1996年夏に「ふるさと落合町(岡山県真庭郡)の自然の素晴らしさ」を地域内 の児童生徒および地域住民に知ってもらうことを目的に、「落合町自然を観察する会」として、地域内の自然愛好者、落合町長、役場担当者 、町教育委員会担当者、町議会議員、学識経験者、漁協関係者が発起人となって設立した任意団体で、平成9年8月に真庭郡中和村(現真庭 市)より自然解説板作成について98万円で業務委託を受けているほか、平成13年6月に真庭郡落合町(現真庭市)より環境マップ(写真 冊子)作成について100万円の助成を受けている。

これまでの活動、研究


真庭自然を観察する会(旧名:落合町自然を観察する会)は、1996年夏の発足以降、旭川や備中川での自然環境調査と「親と子の水辺自然観 察会」を多数実施している。

あわせて、落合町(真庭市落合地区)の自然文化遺産について掘り起こし調査を行うとともに、調査結果をもとに写真冊子「落合町の真庭遺 産」を作成し、全戸(約6000戸)に配布している。また、河川での環境保全活動と平行し、真庭市中央部に広がる星山・櫃ヶ山の林野環境を 生かした「グリーンツーリズム郷」構想を提唱し、櫃ヶ山(湯原富士)に広がる落葉広葉樹林域において、植生調査、天然記念物ヤマネの生 息調査を実施するなど、広く真庭市内の森林域において環境調査や自然観察会を開催している。

このほか、隣接する大山地域と連携し、国立公園大山蒜山地域において、絶滅の危機に瀕するウスイロヒョウモンモドキの生息環境である草 原の保全再生に取り組んでいる。

経歴および実績


真庭自然を観察する会(旧名:落合町自然を観察する会)は、1996年夏に「ふるさと落合町(岡山県真庭郡)の自然の素晴らしさ」を地域内 の児童生徒および地域住民に知ってもらうことを目的に、「落合町自然を観察する会」として、地域内の自然愛好者、役場担当者、町教育委 員会担当者、町議会議員有志、学識経験者、漁協関係者が発起人となって設立した任意団体である。

発足以降、真庭自然を観察する会(旧名:落合町自然を観察する会)では、備中川とともに町内最大の河川である旭川などの河川水辺のビオ トープ空間を街づくり(都市計画)に活かすべく「旭川水系自然再生型地域づくり」を提唱するとともに、旭川や備中川での自然環境調査と 「親と子の水辺自然観察会」を多数実施している。

あわせて、落合町(真庭市落合地区)の自然文化遺産について掘り起こし調査を行うとともに、調査結果をもとに写真冊子「落合町の真庭遺 産」を作成し、全戸(約6000戸)に配布している。

また、河川での環境保全活動と平行し、真庭地域における森林グリーンツーリズムを推進しおり、真庭市中央部に広がる星山・櫃ヶ山の林野 環境を生かした「グリーンツーリズム郷」構想を提唱し、櫃ヶ山(湯原富士)に広がる落葉広葉樹林域において、植生調査、天然記念物ヤマ ネの生息調査を実施するなど、広く真庭市内の森林域において環境調査や自然観察会を開催している。

平成17年3月に落合町が町村合併により真庭市となるにあたり、平成17年4月より会の名称を「落合自然を観察する会」と改め、隣接する 大山地域と連携し、国立公園大山蒜山地域(岡山県真庭市および鳥取県江府町)において、絶滅の危機に瀕するウスイロヒョウモンモドキや ギフチョウの生息環境である草原・里山環境の保全再生に取り組むなど、広域的な活動展開をはかり、草刈りグラウンドワークや里山雑木林 の保全管理活動を行っている。そして、本年(平成19年)4月より名称を「真庭自然を観察する会」と改めるにいたっている。

●辻野誠三(代表者)の略歴  (最終学歴・職歴等)

昭和15年(1940年)5月大阪市生まれ。
昭和40年3月に関西学院大学社会学部卒業後、日本海テレビ放送株式会社に入社。
在職中は、大台ヶ原や大山の自然保護を目的にした写真撮影活動や山岳トレッキングを続ける。
平成12年に日本海テレビ放送株式会社を定年退職。
退職後、自然環境保全活動のフィールドを大山隠岐国立公園大山蒜山地域に定め、平成17年春より岡山県北部の蒜山高原(岡山県真庭市)に 住居を構え、都市農村交流型のグラウンドワーク活動を開始する。
現在、地域住民や学識経験者、地元自治体と連携し、ギフチョウ、ウスイロヒョウモンモドキ、オオサンショウウオの保護のほか、桜巨樹の 保存、草原生態系の保全、里山雑木林の管理保全に取り組み、今年度より「真庭自然を観察する会」の会長となる。
このほか「ちゅうごく田舎暮らし交流クラブ」の幹事長、「奥大山トレッキングツーリズム協議会」や「晴れの国野生生物研究会」の役員を つとめる。

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国立公園大山蒜山地域におけるギフチョウの舞う里山生態系と景観の保全再生活動報告




1.活動の目的


大山蒜山地域(岡山県および鳥取県)では、山麓の谷部に分布する雑木林と林縁農地にギフチョウの生息環境は残されているが、過疎高齢化の進行により、里山林縁部での農地の荒廃が多く目立つようになり、昔の農村風景も消失しつつある。

農地周辺に残る雑木林にかつて見られた明るい里山の環境を再生することができれば、ギフチョウの生息域を拡大させることができるともに、生物多様性豊かな高原農村風景を保全することができる。

ギフチョウは「春の女神」と呼ばれる可憐で美しい蝶であり、大山南麓の雑木林は、ギフチョウの生息地であると同時に、大山山麓の農村風景と生物多様性の保全する上で重要な環境であることから、これを美しく管理するグラウンドワーク活動は、都市と農村との交流や企業の社会貢献活動などと結びつき、地域を活性化させる。

2.活動の方法


(1)ギフチョウ保護と里山雑木林保全に向けたアクション・プログラム策定

現地調査結果などを踏まえ、ギフチョウの保護と里地里山環境保全に向けた具体的な行動計画となる「春の女神ギフチョウ生息地環境保全再生グラウンドワークin大山蒜山」アクション・プログラムを策定した。

(2)ギフチョウ保護と里山雑木林保全に向けたグラウンドワーク活動

大山蒜山地域の農村域において、絶滅が危惧されているギフチョウの生息環境を保全することを目的に、ギチョウの生息(繁殖)環境となる落葉広葉樹林および農地域に近い里山雑木林について、林床状況の調査および笹刈り作業などをグラウンドワーク活動として実施した。

(3)大山の里山雑木林を巡るグラウンドワーク活動ツアー

大山南麓を中心に大山蒜山地域おける里山雑木林および落葉樹林域を巡るグラウンドワーク活動ツアーを開催した。

(4)大山南麓里山雑木林環境(植生・植物)調査報告書の作成

ギフチョウ保護と里山雑木林保全に向けたグラウンドワーク活動において実施した落葉広葉樹林の林床(植生)調査の結果を報告書にまとめた。

(5)配布用印刷物およびホームページの作成

大山蒜山地域に見られる落葉広葉樹林と山麓の里山風景を紹介した印刷物を作成し、あわせて、その内容をもとにホームページを作成している(作業継続中)。

3.活動の結果


現地での里山雑木林調査に加え、文献資料調査により、大山南麓および蒜山地域の農村域における落葉樹林域の広がりと、その管理状況を把握することができ、今後、現在あるギフチョウの生息域のほかに、下草(笹)刈りなどの里山管理の作業を行うことで、新たにギフチョウ生息地として再生が可能とされる林野域を拡大させるための基礎資料づくりができた。

現地での活動は、里山雑木林の調査とあわせて、下草(笹)刈りなどの里山管理の作業を行い、これらのグラウンドワーク活動を通じて、アクション・プログラムを策定することができ、あわせて、大山蒜山地域の里山雑木林を訪ねるグラウンドワーク活動ツアーや検討会の開催を行うことができた。

グラウンドワーク活動ツアーは、大山地域および蒜山地域において、環境保全活動やグリーンツーリズム活動、エコツーリズム活動を実践・推進する住民・NPO等(グラウンドワーク大山蒜山、真庭遺産研究会)、行政(地元自治体)、研究機関(鳥取大学)と連携し、「第1回大山蒜山ミーティング」として実施しており、大山蒜山地域において景観保全と野生生物の保護、生物多様性の保全を実践するネットワークづくりをよりいっそう進めることができた。

(1)ギフチョウ保護と里山雑木林保全に向けたアクション・プログラム策定

活動年月日:2008年4月15日〜2009年2月3日

活動対象地:岡山県真庭市蒜山富掛田地内および鳥取県江府町御机地内、下茅屋地内、大河原地内、貝田地内、美用地区、吉原地内、久連地内の雑木林(落葉広葉樹林)と林縁農地

活動参加者:約50人(延べ)

活動の内容:以下のとおり

プログラムは里山雑木林をギフチョウの生息に適した環境の再生に向けて管理していくものであり、策定作業は、晴れの国野生生物研究会を会員で、里山雑木林の保全に係わってきたメンバーを中心に検討会や現地確認を行う形で実施したが、作業の実施にあたっては、蝶の専門家(星川和夫氏、山本善民氏)に意見を聞くとともに、ギフチョウ保護の実践経験を有する有識者(小串氏)にも指導を求めた。小串氏は植生の専門家でもあり、植生管理についての調査協力も求めた。さらに大山山麓に生育する植物に詳しいグラウンドワーク大山蒜山のメンバーにも協力を求めた。このアクション・プログラムは、現地調査結果を踏まえ策定する予定であったが、現況では笹が密生し、ギフチョウの生息する可能性が低くても、笹刈りなどで里山管理を行うことで、将来、ギフチョウの生息環境が再生させることができると判断し、対象地である大山南麓について里山雑木林の環境調査をグラウンドワーク活動として実施し、その結果も踏まえ策定作業を進めた。

(2)ギフチョウ保護と里山雑木林保全に向けたグラウンドワーク活動

活動年月日:2008年4月15日〜2009年2月24日

活動場所:岡山県真庭市蒜山富掛田地内および鳥取県江府町御机地内、下茅屋地内、大河原地内、貝田地内、美用地区、吉原地内、久連地内の雑木林(落葉広葉樹林)と林縁農地

活動参加者:約80人(延べ)

活動の内容:以下のとおり

活動は、会メンバーに学識経験者、下草刈りの作業員が加わる作業チームを組んで、農地に近い里山雑木林に入り、林床状況の調査および笹刈り作業を実施した。下草(笹)刈り作業は、林床(植生)調査と平行して行い、学識経験者の指導のもとに、樹林内の日当たり条件や下草(笹)の繁茂の状況などを確認しながら行った。下草(笹)刈りの作業員は、当初、地元森林組合を予定していたが、同行する学識経験者とのスケジュール調整が困難であったため、里山管理で活動交流のある真庭遺産研究会、晴れの国野生生物研究会、グラウンドワーク大山蒜山、鳥取県自然体験塾に作業協力を依頼した。

植生調査は、農地近くの里山雑木林だけでなく、実際にギフチョウの生息が確認されている樹林についても実施し、奥大山地域においてギフチョウが好む雑木林の環境を把握し、それを参考に里山管理を行った。

(3)大山蒜山の里山雑木林を巡るグラウンドワーク活動ツアー

グラウンドワーク活動ツアーは、大山地域および隣接する蒜山地域において、環境保全活動やグリーンツーリズム活動、エコツーリズム活動を実践・推進する住民・NPO等、行政(地元自治体)、研究機関(鳥取大学)と連携し、「第1回大山蒜山ミーティング」として実施し、(財)日本グラウンドワーク協会や(財)休暇村協会にも参加協力を求めた。ツアーはギフチョウの生息する大山蒜山地域(真庭市、江府町、伯耆町、大山町、琴浦町)の落葉広葉樹林をコースに組み込む形で実施し、学識経験者(里藤、小串)および会のメンバーが案内解説するワークショップ方式で実施した。

活動年月日:2008年11月8日、9日

活動場所:岡山県真庭市蒜山富掛田地内および鳥取県江府町御机地内、下茅屋地内、大河原地内、貝田地内、美用地区、吉原地内、伯耆町日光地区、大山町大山寺周辺、琴浦町大休峠周辺の落葉広葉樹林と林縁農地

活動参加者:63人(下見など準備および講師を含む)

活動の内容:以下のとおり

(4)大山南麓里山雑木林環境(植生・植物)調査報告書の作成

活動年月日:2009年1月4日〜2009年2月25日

活動参加者:約20人(延べ)

活動の内容:以下のとおり

調査報告書は、ギフチョウ保護と里山雑木林保全に向けたグラウンドワーク活動において実施した落葉広葉樹林の林床(植生)調査と文献調査の結果をもとに作成した。植生調査および文献調査は、グラウンドワーク活動に同行し指導した学識経験者(小串重治氏)に依頼し、報告の作成作業についても協力を求めた。小串重治氏は、植生の専門家であるとともに、ギフチョウ保護の実践経験を有している。

(5)配布用印刷物およびホームページの作成

活動年月日:2009年1月20日〜

活動参加者:約20人(延べ)

活動の内容:以下のとおり

配布用印刷物は、ギフチョウ保護と里山雑木林保全に向けたグラウンドワーク活動において実施した落葉広葉樹林の林床(植生)調査の結果とアクション・プログラムの内容を整理して作成し、その内容をもとにホームページを作成した。なお、ギフチョウに生息に係る情報の取り扱いについては、保護の観点から生息地が特定されないよう配慮した。

4.活動の考察


事業当初の予定では、ギフチョウ保護と里山雑木林保全に向けたアクション・プログラムを策定した上で、下草(笹)刈りなど現地でのグラウンドワーク活動を進める予定でいたが、広大な面積の里山雑木林を対象とした管理作業を行う上で、作業者と専門家とが現地の状況を確認し、情報を共有しながら事業を進めることが効率的と考え、専門家の同行によるグラウンドワーク活動を進める中で、林床(植生)調査を実施し、プログラムの策定を平行して進めた。

大山の南麓および蒜山高原には、広大な面積で落葉広葉樹の雑木林が広がっており、これを広く管理し、ギフチョウの生息域を広げるためには、相当の労力で継続的な作業が必要である。

今回、行った里山管理作業は、その中のごく一部の雑木林であり、効率的かつ広面積、継続的に作業を行うためには、大規模に森林を所有する企業および自治体などと連携して事業展開することも重要であるから、策定したアクション・プログラムを活用して、企業の社会的貢献活動(CSR活動)をとり入れたグラウンドワーク活動を展開し、里山雑木林を管理する成功事例を示しながら、地域住民および行政(関係地自体)、企業等への事業への理解と里山雑木林の保全再生に向けた普及啓発をはかる。

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大山蒜山ギフチョウの舞う里山雑木林再生




活動プログラム


ギフチョウは、中国山地などに広く生息していた里山の蝶で、「春の女神」と呼ばれる可憐で美しい蝶で、明るい落葉広葉樹林のある里山に生息している。

大山蒜山地域の林野域では、「ギフチョウの棲む里山づくり」をテーマに雑木林を美しく管理する活動を展開することで、大山火山群を望む山里に昔懐かしい里山農村風景を再生させることができる。

大山蒜山地域の麓には、花の咲くのどかな山里の風景が開け、ギフチョウをはじめ里山の生き物が多く観察できる。

真庭自然を観察する会では、平成20年春に大山蒜山地域をフィールドに環境保全活動に取り組む住民・NPO等といっしょに、「グラウンドワーク大山蒜山」を立ち上げ、春の女神ギフチョウをシンボルに大山蒜山地域における里山雑木林の環境保全活動を進めています。

この冊子は、平成20年度イオン環境財団の活動助成を受けて作成しました。

問合せは、真庭自然を観察する会事務局〒717-0502岡山県真庭市蒜山富掛田654-32

tel・fax:0867−66−2287まで


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<ほんぶん>


ギフチョウは、下草の少ない落葉広葉樹林に生息し、カタクリなどの花を訪れ吸蜜する

。 幼虫の食草は、ウマノスズクサ科のヒメカンアオイなどのカンアオイ属や、フタバアオイ属のフタバアオイ(カモアオイ)などで、卵もこれらの食草に産みつけられる。

ギフチョウは、かつて中国地方を中心に本州西部に広く生息していた里山の蝶で、「春の女神」と呼ばれる可憐で美しい蝶である。山麓の農村域でギフチョウが生息するためには、人の手が加わった雑木林と、食草となるカンアオイと、スミレやカタクリ、サクラなど春の花が必要である。

大山蒜山地域では、山地のブナ林に加え、山麓の谷部や丘陵地に分布する雑木林とその林縁部にギフチョウの生息環境は残されているが、過疎高齢化の進行により、里山雑木林や山麓農地の荒廃が多く目立つようになり、昔懐かしい里山農村風景も消失しつつある。

大山蒜山地域にギフチョウの生息可能性の高いとされる樹林の環境を求めると、@山地のブナ天然林、A丘陵地の落葉広葉樹林、B渓谷の雑木林などがあげられる。

@山地のブナ天然林


残雪の残る5月下旬に鍵掛峠東側のブナの樹海で成虫数固体が確認されているほか、山麓の谷筋や渓谷域において、カンアオイの群落が複数確認でき、その多くにギフチョウのものとみられる食痕が見られたことから、大山蒜山地域では山地のブナ天然林にも生息しているものと考えられる。

とくに、大山や上蒜山、毛無山の稜線には、カタクリの群落が多くみられ、カタクリの花に蜜を求めて舞よるギフチョウの姿が複数の登山客によって目撃されており、春に林床まで太陽の光が射し込むブナ林は、ギフチョウの生息適地となっている可能性が高い。

A丘陵地の落葉広葉樹林


火山灰砂台地(笠良原)からなる丘陵地の落葉広葉樹林において、ギフチョウの成虫および卵を確認している。ギフチョウの卵を確認した場所は、雑木林の中の浅い谷筋で、周囲にはトチノキやコナラ、ミズキなどの落葉樹が生育している。谷には少量の水が流れており、水は細谷へと注いでいる。この谷筋には、食草となるミヤコアオイが群生している。

B渓谷の雑木林


大山南麓では、船谷川や本谷川、細谷川などの峡谷域にトチノキ渓畔林が育ち、その林床にはカンアオイの群落も見られ、ギフチョウの卵や食痕が確認できている。また、本谷川が丘陵地を深く侵食して流れる景勝地「かまこしき渓谷」もギフチョウの生息地とされている。


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大山の落葉広葉樹林


大山蒜山地域を代表する落葉広葉樹林としては、山地のブナ林、高原のミズナラ林、丘陵地のコナラ林がある。コナラ林は、アカマツ林とともに、里山雑木林を代表する二次林である。

ギフチョウの生息が確認された林は、ブナ林と里山雑木林である。ここでいう里山雑木林とは、人里周辺の林野域に見られる二次林のことで、古くから人の手が加わってきた半自然の樹林である。大山山麓では、ミズナラやトチノキの交じる里山雑木林もみられる。

@ブナ林


大山蒜山を代表する優れた自然がブナ林である。大山に分布する天然林は、厳密には手つかずの原生林ではなく、大山が信仰の山であり、神聖な領域であったとことから、人の手が加わりながらも、森(ブナ林)が人によって大切に守られており、その結果、西日本最大級のブナ林が大山に残されるに至っている。

ブナ林もよく観ると、原生林の景観をみせるブナの極相林のほか、伐採跡にブナが萌芽再生したブナの二次林、ブナとミズナラが混生する若いブナ林など、多種のブナ林が奥大山にみられ、それぞれの環境において異なった生態系や景観がみられる。

A里山雑木林


ここでいう里山雑木林とは、人里周辺の林野域に見られる二次林である。

大山蒜山蒜山を語る時、「森」といえば、ブナの原生林をイメージするが、山麓の里山地帯に広く分布する雑木林(主にコナラ林と)も大山の自然や風景を緑豊かなものにしている重要な森林である。里山雑木林は、大山山麓の丘陵域に広く分布する樹林で、山腹を被うブナ林とともに、大山を代表する森林である。

春の新緑、夏の深緑、秋の紅葉、明るい冬枯れと季節感豊かな林野の風景を見せる里山雑木林は、大山の自然を語る上で、重要な環境要素である。


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大山蒜山地域の里山風景


大山の南麓に位置する江府町には、広大な大山の裾野が広がり、裾野をなす火山灰砂台地の上には、農地や集落、雑木林、牧野の環境が開け、大山南壁を背景に美しい里山農村風景が見られる。

大山南麓の裾野に広がる平坦な台地は、大山火山(鳥ヶ山を含む)の熱雲を伴う爆発活動によって発生した火砕流によって形成された火山灰砂台地で、船谷川や本谷川などの放射谷に挟まれるように細長くのび、平坦面の縁は断崖をなしている。これは成層火山の山麓にみられる典型的な浸食地形である。

大山蒜山地域ののどかな里山風景は、このような深くえぐられた火山麓特有の地形の上に存在しており、名峰を背景とした明るい山里の風景、雑木林の覆われた丘陵地の風景がその代表的な景観である。

@名峰を背景とした明るい山里の風景


大山の裾野や蒜山盆地には、広々とした水田農村域や草原牧野域が広がり、水田や牧場を前景に大山南壁を美しく仰ぎ見ることができる。 この緑豊かな水田風景は、大山の噴火による火山灰と、大山の豊かな森が育む水とによる大地の風景である。水田の周辺には、集落や雑木林が見られ、背景となる大山南壁とともに、季節感豊かな山麓の風景をなしている。水田域は、火山灰台地上の平坦面にも広がり、水田の周囲は放射谷の渓谷や丘陵域となって、里山雑木林の環境となっている。

牧野の風景は、より標高の高い高原地帯に見られ、採草放牧地や高原野菜畑が落葉広葉樹林に囲まれるように開けている。蒜山高原でも牧野の周辺には、ススキ草原や疎林の環境も一部にみられるが、これは、かつて山焼き(火入れ)や放牧によって維持された草原の名残りをなすもので、中国山地で広く見られた里山の風景でもある。

A雑木林の覆われた丘陵地の風景


大山蒜山地域には広く山林域がみられるが、山林の多くは雑木林である。雑木林は船谷、本谷、細谷など峡谷をなす放射谷の斜面や丘陵地上に分布しており、傾斜が急な峡谷以外の雑木林の多くは、近年まで薪炭林として利用されていた里山雑木林が放置されたものや、牧野や伐採跡地が放置され広葉樹林へと遷移したものである。そのため、丘陵地上の雑木林は、コナラやクヌギなどの落葉広葉樹からなる若い林が多く、大山、蒜山の山麓にあって季節感豊かな樹林風景をみせているが、一歩樹林内に足を踏み入れると、背の高いササが繁茂し、かつて見られた人の手がよく加わった里山雑木林の景観は失われている。


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ギフチョウの舞う里山雑木林の再生について


ギフチョウが生息するためには、人の手が加わった雑木林など明るい落葉広葉樹林の環境が必要であるが、かつて見られた里山の環境は年々失われている。大山蒜山地域でも山麓の谷部に分布する雑木林と林縁農地にギフチョウの生息環境は残されているが、過疎高齢化の進行により、山林や農地の荒廃が多く目立つようになり、昔の農村風景も消失しつつある。

大山蒜山地域に広がる山林域に、明るい落葉広葉樹林の環境を再生するとともに、林縁の農地を美しく管理し、かつてみられたギフチョウの棲む里山の自然を蘇らせることで、ギフチョウをシンボルに、昔懐かしい里山農村の風景づくりを進める。あわせて、一部に草原の環境も再生保全し、雑木林へと続く、生物多様性の高い高原牧野の風景についても再生をはかる。草原・疎林の環境は、かつて大山蒜山地域一帯で広く見られ、火入れや草刈り、放牧によって維持されてきたが、近年、大きく減少していることから、大山蒜山地域の里山林縁域において再生保全すべき環境であると考える。

里山雑木林再生に向けての活動プログラム


林野域に美しい里山雑木林の環境を再生させるためには、土地の所有者など関係者の理解と協力が必要である。適当な環境を有する林野域について、用地を取得して保全活動を進めるのが理想であるが、現実的には資金面などから用地取得が困難な場合も多く、ここでは、大山蒜山地域における里山雑木林再生に向けての活動プログラムとして、以下の手順方法(行動計画)を紹介する。

@対象地の抽出・選定


大山蒜山地域にまとまった面積で残る公有林および財産区、法人所有の山林の分布状況を聞き取りなどの方法で把握し、地元自治体や森林組合、山林を管理する企業・個人など山林管理に係る関係者・担当者に問合せ、その管理状況について調べる。あわせて、地形図、航空写真、現存植生図などにより、山林や土地の情報を調査する。その中で、雑木林の再生や野生生物の保護など環境保全を目的とした森林活用について理解や関心のある企業、自治体、地区・個人などと話し会いを行い、現地踏査についての了解を得て、環境調査を実施し、対象地(あるいは候補地)の抽出・選定を行う。



A専門的自然環境調査


対象地(あるいは候補地)となる山林域について、地権者の了解のもとに、自然環境調査を実施する。調査は専門家の指導・協力による植生調査、動植物調査、景観調査を中心に行い、ギフチョウ生息地となる里山雑木林保全再生のための森林管理計画を作成する上で必要な環境情報を集める。調査は、ギフチョウの生息環境の保全再生とあわせて、オオサンショウウオやヤマネなど天然記念物等に指定された他の珍しい野生生物の生息に係る情報についても収集し、森林管理計画作成の参考にする。



B環境保全構想の策定


現地での自然環境調査により得られた情報をもとに、ギフチョウなど保護すべき野生生物、現状のまま保存すべき環境(景観、自然林、清流、巨樹、文化財など)、手を加えて維持管理すべき環境(里山雑木林、植林域、草原、農地、古道、建物など)、自然(里山雑木林など)を再生すべき荒廃した環境、活用すべき資源や環境(天然林、清流、景観、文化財など)について検討し、対象となる山林域の環境保全構想の策定を行うとともに、構想をもとに今後の森林整備や活用について地権者等との協議を行う。構想の策定にあったては、専門家の指導・協力を求め、森林環境の保全と活用について、方向性や戦略を明確にする。



C森林管理計画の作成


策定された構想および地権者と協議内容をもとに、対象となる山林域ついて、ギフチョウ生息地となる里山雑木林保全再生のための森林管理計画を作成する。森林管理計画の作成にあたっては、森林組合など森林管理(山林施業)の専門家・団体と共同・連携して行い、具体的な山林施業計画や資金計画、計画を実行するための組織体制、環境モニタリング調査についても内容や責任を明確にする。

D現場施業と環境管理


森林管理(山林施業)は、刈り払い機やチェーンソーなどを使う、危険作業もあることから、森林組合など森林管理(山林施業)を専門とする団体・個人の協力のもとに実施し、必要に応じて専門業者へ作業委託を行う。あわせて、森林管理作業のボランティアチームを組織して実施する場合、作業安全マニュアルに基づき、専門家の指導協力のもとに実施する。また、作業実施にあたっては、植生(植物)や野生生物の専門家の助言・指導を求め、自然環境の保全や野生生物の保護、景観保全について十分配慮する。

E環境モニタリング調査


施業期間中および施業後について、自然環境調査を実施し、問題等が生じた場合、および問題等が生じるおそれが発生した場合(あるいは懸念される場合)は、専門家の助言・指導を仰いだり、必要に応じて検討会を開催し、自然環境の保全や野生生物の保護、景観保全などについて検証を行う。環境モニタリング調査については、山林施業に先立って、調査項目や調査時期・頻度、調査方法、調査担当者(責任者)を定めておく。






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