真庭では多様な川の風景の中に、多くの生き物が棲んでいる。
蘇れハンザキの棲む懐かしくも美しい水景色
真庭の河川環境

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 中国山地の山間(岡山県真庭郡)を流れる旭川とその支流には、清流を中心に集落が形成されており、人と川との生活の中で関わりを感じさせる風情ある水景色がみられ、そこには太古の昔より特別天然記念物オオサンショウウオが広く生息している。
 オオサンショウウオの生息環境となる緑豊かな川の自然を保全再生していくことで、旭川河畔の集落において、清流の自然と共生した静かなで美しい住環境が保全されることが期待される。

























 真庭遺産研究会では、平成11年以降、真庭地域北部を流れる河川について、河川構造物の状況について調査し、オオサンショウウオ繁殖状況の情報を収集するとともに、地元住民より今と昔の河川環境の変化について聞き取り調査を実施し、伝統的河川土木工法や昔見られた淵、河畔林などを検証している。そして、平成14年9月、11月に郡民を対象に環境セミナーを開催し、オオサンショウウオの生息状況など中心に河川環境についてその現状と望ましい「ふるさとの川」の現状について報告している。






























  旧川上村は旭川の上流域に位置し、地域を流れる河川としては、旭川をはじめ、その支流の明蓮川、湯船川、田部川、内海谷川、天谷川、苗代川、白髪川、熊谷川、粟住川などがあげられる。
 これら山地に源を発した旭川の支流は、火山性台地の谷筋や山麓の牧野を緩やかに流れ、蒜山原を流れる旭川へと注ぐ。
 とくに、内海谷川、天谷川、苗代川など、北部の火山性の台地域を流れる旭川の支流での河川勾配は小さく、クロボコと呼ばれる火山灰に覆われた台地を長い距離で浸食し、浸食崖を形成しながら蒜山原へと流れ出す。
 村が旭川の源流域にあたるため、平野をゆったりと流れる川幅の大きな河川の水辺はみられないが、蒜山原を流れる旭川では、瀬と淵、ワンドや中州が形成され、生態系の豊かさを感じさせる川辺の景観が形成されている。
 なお、旭川の河畔には、蒜山原を流れる旭川の景観を特徴づける地形として河岸段丘がみられ、旭川の岸辺には高さ10〜20mの段丘崖が形成されている。
 また、川上村には、海抜1,159mの皆ケ山を最高峰として、擬宝珠山、三平山、朝鍋鷲ケ山などの山地が連なるが、村全体の標高が高く、比高差1,000mを超える急峻な山地や山岳地帯は存在しないため、大山の放射谷にみられるような降雨時にのみ表面を水が流れる沢はほとんどみられない。


 旧川上村の土地利用は、渓流域をなす山地が山林、台地上や山裾が牧野、その谷筋は原野や農地となっており、蒜山原に出ると河川の周囲には水田や集落が開けている。
 北部西部の渓流域に広がる山林の多くは、コナラやミズナラ、サワグルミ、トチノキなどからなる落葉樹林で、湯船川や苗代川の源流域には自然性豊かなブナ林の環境もみられる。一方、南部の山地では比較的スギ・ヒノキの植林が多くみられ、そこを流れる谷川の周囲には、自然性が低下した薄暗い森林の環境もみられる。
放牧場や高原野菜畑の景観が広がる山裾の牧野についてみると、朝鍋山麓を流れる渡瀬川の谷川に沿ってトチノキやサワグルミなどからなる渓畔林が帯状に残されており、渓流の自然が保全されている。
 また、鳩ケ原と呼ばれる古期大山の台地上や茅部野、郷原の段丘面上には、ダイコン畑や牧草地、飼料畑などの高原畑の風景が広がっており、その谷筋には、天谷川や内海谷川、宿波川などの水辺がみられ、ハンノキやヤナギが疎林をなす湿地も形成されている。
 このように、火山地形が広く分布する川上村では、蛇ケ乢湿原をはじめとして、鳩ケ原の谷筋などに湿地が形成され、ミツガシワやヌマガヤ、モウセンゴケ、イワショウブなどの湿生植物の生育する湿原の風景もみられる。
 これら火山性の台地を深く浸食して流れる苗代川や宿波川、天谷川では、水辺がツルヨシやチシマザサに覆われ、人が踏み入ることも困難な状況となっている。
 一方、水田風景が広がる蒜山原に目を向けてみると、旭川をはじめ、明蓮川や内海谷川などの河川には、ツルヨシが茂る河原や中州、ワンド域が形成され、生き物が多く棲んでいそうな水辺の景観がみられるほか、バイカモが川面にゆれる蒜山地域ならでは川辺の風景もみられる。
 また、旭川の周囲に開けた水田域には集落が散在し、集落内を流れる水路では、オオサンショウウオの姿をみることもできるといわれている。
 なお、旭川の河岸には段丘崖がみられるが、段丘崖の高さはおおむね10〜20mで、コナラやヤマザクラなどからなる落葉樹林となっており、段丘面上はダイコン畑やススキ野原、カラマツの点在する牧野が開けている。
このような流域の土地利用が起因し、蒜山原を流れる旭川の川底には、土砂がヘドロ状に堆積し、有機物による水質の汚濁や富栄養化が進んでいるとされている。






















 旭川の支流となる備中川などでは、6月に多くゲンジボタルの発生を観察することができる。ゲンジボタルは、日本特産の種で成虫は体長12〜18mmぐらい、体色は黒色で鈍い光沢があり6月〜7月に出現し、清流近くの林地でみられる。幼虫は清らかな水の流れる環境に生息し、水生巻貝のカワニナを捕食して育つ。分布は本州、四国、九州で、県内でも山間の清流を中心に広く分布しているものの、近年、河川水の汚濁や護岸工事による生息域の消失が進み、生息域と個体数がともに減少した。
 また、真庭地域の南部を流れる備中川などでは昔はアユモドキやオオサンショウウオの姿をみることができたと聞きく。





















































  旧八束村は、旧川上村と同じように、旭川の上流域に位置し、村を流れる河川としては、旭川をはじめ、その支流の玉田川、中谷川、上井川、三谷川、宇田川、戸田川、宮城川、戸谷川、高松川、山城川などがあげられる。
 これら山地に源を発した旭川の支流は、蒜山三座の裾野に発達した谷筋や麓の農村域を瀬となって流れ、蒜山原を流れる旭川へと注ぐ。玉田川をはじめ、中谷川、上井川など、蒜山三座の裾野域を流れる旭川の支流での河川勾配は小さく、これらの川は、クロボコと呼ばれる火山灰に覆われた裾野台地を浸食し、蒜山原の水田域へと流れ、旭川と合流する。
 村が旭川の上流域にあたるため、川幅の大きな河川の景観はみられないが、蒜山原を流れる旭川では、瀬と淵、ワンドや中州が形成され、生態系の豊かさを感じさせる川辺の景観が形成されている。とくに、太古の時代に大きな湖であった蒜山原の水田農村域を大きく蛇行して流れる旭川の水辺には、川岸にツルヨシやヤナギの生える湿地帯が形成され、自然性豊かな河川の風景をみることができる。
 なお、旭川の河畔には、蒜山原を流れる旭川の景観を特徴づける地形として河岸段丘がみられ、旭川の岸辺には高さ10〜20mの段丘崖が形成されている。
 蒜山三座に源を発する谷川の上流域には、渓流の環境がよくみられ、中蒜山の麓に位置する塩釜では、とうとうと湧水が流れ出しているほか、蒜山原に注ぐ上井川や三谷川などの上流に渓流域が形成されている。
 しかし、村内に大きな落差をもって流れる急流や瀑布はみられない。また、急斜面に挟まれた深い谷がみられる場所は、蒜山三座の渓流域に限られ、中和村、湯原町にみられるような峡谷や渓谷は発達していない。一方、火山地形が広く分布する八束村では、谷筋や山裾に湧水がみられ、犬挟峠の湿原や東湿原をはじめ玉田川、中谷川など蒜山三座山麓の谷筋や山裾などに小規模な湿地が形成されている。
 八束村の北部には、海抜1,200mの上蒜山を最高峰として、中蒜山、下蒜山からなる蒜山三座がそびえているが、火山性の山地であるため、ここに降った雨は浸透し、伏流水となって麓に湧出する。この代表的なものが塩釜の湧水であり、湿地もこのように伏流水が湧く場所によく形成される。


 旧八束村の土地利用は、基本的には旧川上村と同じで、渓流域をなす山地が山林、台地上や山裾が牧野、その谷筋は原野や農地となっており、蒜山原に出ると河川の周囲には水田や集落が開けている。蒜山三座の渓流域に広がる山林の多くは、コナラやミズナラ、サワグルミ、トチノキなどからなる落葉樹林であるが、上井川や三谷川の上流域では、水辺がツルヨシやチシマザサに覆われ、人が踏み入ることも困難な状況となっている。
 一方、南部東部の丘陵地では比較的スギ・ヒノキの植林やアカマツ林が多くみられ、そこを流れる谷川の周囲には、里山の環境もみられる。
放牧場や高原野菜畑の景観が広がる蒜山三座の山麓についてみると、上蒜山から発生する沢では、細流に沿ってトチノキやミズナラなどからなる渓畔林が帯状に残されており、渓流の自然が保全されている。
 また、百合原と呼ばれる上蒜山の火山麓扇状地上には、放牧場や牧草地などの牧野の風景が広がっており、その谷筋には、玉田川や中谷川などの水辺がみられ、ハンノキの疎林やミズゴケ、コオニユリ、ノハナショウブが生育する湿地帯も形成されている。
 このように、村の北部に火山性山地がそびえる八束村では、犬挟峠の湿原や東湿原などにミツガシワやヌマガヤ、モウセンゴケ、イワショウブなどの湿生植物の生育する湿地帯がみられるほか、蒜山三座から発生する沢や谷筋に小規模な湿地が形成され、湿生樹が疎林をなす湿原の風景もみられる。
 蒜山三座に源を発する河川は、裾野の台地を浸食し、蒜山原の水田域へと流れ出る。裾野台地の上にはダイコン畑や飼料畑、ススキ野原が開け、河川は浸食崖の下を流れる。この浸食崖はコナラやヤマザクラなどからなる落葉樹林に被われた斜面となっており、林床はシマキザサが覆っている。崖下を流れる川の水辺には、ツルヨシが茂り、その周囲にはススキ草原や水田がみられる。
 また、田園風景が広がる蒜山原に目を向けてみると、かつて大きな湖であった蒜山盆地の平野を流れる旭川では、ツルヨシの茂る河原にワンドや中州が形成され、生態系の豊かさを感じさせる川辺の景観が形成されている。
 ヌマガヤオーダー・ヨシクラスの湿地帯は、旭川の水辺にもみられ、花園から宮田あたりにかけての水田農村域を大きく蛇行して流れる旭川では、川岸にツルヨシやヤナギの生える湿地帯が形成され、自然性豊かな河川の風景をみることができる。


 真庭市北部は、オオサンショウウオが数多く棲息しているとされているが、砂防堰堤や落差工などの河川改修工事によって生態系が分断されるなど、その繁殖域は、限られた場所になっていることから、オオサンショウウオが多く生息するとされる水域について、河川形状、植生、水生生物の生息状況、人の手の加わり方などを調査することで、人とオオサンショウウオとの川を通じての係わりを解明し、今後の環境保全と川を生かした地域づくり・まちづくり「自然共生型“河畔の街づくり”」を考える。


























 旧中和村は旭川支流の下和川の流域に位置し、地域を流れる河川としては、湯原湖の湖水域を含む旭川、下和川のほかに、その支流である津黒川、山乗川、植杉川、浜子川などがあげられる。これら山地に源を発した下和川の支流は、山地に深い峡谷を形成し、急流となって山麓に流れ下り、また、丘陵地の谷間に湿地を形成し、山麓の水田域を緩やかに流れ、下和川へと注ぐ。
 とくに、山乗川、植杉川など、東南部の山岳域を流れる谷川での河川勾配は大きく、深い峡谷や瀑布、渓谷を形成しながら、山地の谷間を滝川となって流れ下り、麓の水田域へと流れ出す。植杉川は、一ノ茅の集落域に近い樹林域を滝川となって流れており、山乗川は数段の瀑布となって津黒山の山腹(南斜面)を流れ、これら植杉川、山乗川の中流には植杉渓谷、不動滝などの名勝もみられる。
 また、南部のブナ林やスギ・ヒノキの植林の広がる植林域では、植杉川、山乗川の渓流がみられ、一ノ茅付近では早瀬となって流れている植杉川の清流がみられる。
 このように、渓流となって中和村を流れる河川は、村の中央部を流れる下和川とその支流の植杉川、山乗川などの谷川である。渓流が多くみられるのは地形が急峻な村の南東部で、下和川は荒井付近を早瀬となって流れ、自然の川岸も多く残っている。
一方、村の北部西部の丘陵域を流れる浜子川や大原川での河川勾配は小さく、その周囲には、大原の湿原をはじめとして、谷筋や山裾などに小規模な湿地が多く形成されている。
 村が下和川の源流域にあたるため、平野をゆったりと流れる川幅の大きな河川の水辺はみられないが、麓の水田農村域を流れる下和川では、早瀬や淵が形成され、昔ながらの川の形態をみることができる。
 また、旧八束村との境界付近から湯原湖にかけての丘陵の谷間を流れる旭川では、瀬となる部分が連続し、湯原湖のバックウォーターとなる初和付近では、春に雪解けの水をたたえ増水した旭川の湖沼的な風景がみられる。
なお、村内に湯原湖の湖沼域を除き、湖や沼、ため池、貯水池など大きな面積の止水域はみられず、湖水の景色を形成する旭川の水辺は、湖沼景観に乏しい蒜山地域にあって地域を代表する湖の水辺である。


 旧中和村の土地利用は、渓流域をなす山地や丘陵地が山林、台地上や山裾が畑地、その谷筋は原野や水田となっており、下和川の周囲には水田や集落が開けている。
 渓流域をなす山地は、村の南東部にみられ、そこに広がる山林の多くは、コナラやカエデ、サワグルミ、トチノキなどからなる落葉樹林とスギ・ヒノキの植林で、山乗川や植杉川の源流域には自然性豊かなブナ林の環境もみられる。これら山地を深く浸食し、峡谷や滝川を形成して流れる植杉川や山乗川の渓流域では、渓流に沿った斜面に生えるコナラやカエデなどの広葉樹が水辺に枝を張り、自然性豊かな渓流の環境がみられる。
 なお、このような渓流は、急峻な地形のため、人が近づくことも困難な状況となっているが、山乗渓谷ではリュウキンカなど氷河時代の依存種の生育も確認できる。
 また、スギ・ヒノキの植林は、植杉川、山乗川の渓流域にも多くみられ、渓流の周囲には、薄暗い人工林の環境が広がっている。一方、北部や西部に広がる丘陵地上には、アカマツ林を主とする二次林が多くみられ、谷筋には湿地や水田、原野が分布している。
 このように、山裾に湿地の環境が形成されやすい中和村の北部西部では、大原の湿原をはじめとして、湿地の環境が多くみられ、ハンノキが疎林をなす原野の風景や、ミツガシワやヌマガヤ、ミミカキグサ、サギソウ、オタカラコウなどの湿生植物の生育する湿原の風景もみられる。
 とくに、なだらかな地形をなす村北部の丘陵域では、台地をなす丘陵地上に、ダイコン畑や牧草地などの高原畑の風景が広がっており、その谷筋には、浜子川や吉田川などの水辺がみられ、ミツガシワやミズゴケが生育する湿地も形成されている。
 山麓の水田域に目を向けてみると、下和川をはじめ、津黒川や植杉川などの河川には、ツルヨシが茂る河原やワンド域が形成され、昔ながらの川辺の景観がみられる。
 とくに、下和川が清流となって流れる周囲には、水田農村の風景が開け、浜子川や吉田川が水路のように緩やかに流れている。ここでは、セリやツルヨシが育つ水辺にトンボや魚の姿を多くみることもできる。
 旭川の水辺に目を向けてみると、湯原湖のバックウォーターとなる初和付近に、ヤナギが水上林を形成する印象深い湖畔の風景がみられるほか、その上流には川辺に沿ってヤナギが疎林状に生え、自然性豊かな川の景色が育っている。




  旧湯原町では、町の中心を旭川が流れ、ダムによって大きな湖沼域が形成されている。町を流れる河川としては、旭川をはじめ、その支流の鉄山川、藤森川、釘貫川、社川、田羽根川、白根川などがあげられる。
 これら、旧湯原町を流れる河川は、その入り組んだ山地の地形を反映して、微妙な形で分水界が生じているため、多くの谷川が合流しながら旭川へと向かって流れるといった複雑な水系網を形成している。
 山地に源を発した旭川の支流は、山地を谷川となって流れ下り、麓の農村域へと流れ出るた後、流れの早い瀬を形成しながら、山麓の水田域を流れ、旭川へと合流する。
 このように、蒜山原を流れる河川に比べ、老年期の山地を急流となって流れ下る湯原町の河川には、砂礫が多く堆積し、清流らしい川の景観が多くみられる。
 とくに、町の東部南部に位置する霞ケ山、摺鉢山、櫃ケ山などの山地の地形は険しく、古屋川の上流にみられる不動滝をはじめ、渓流や瀑布をなす渓流がみられ、スギ・ヒノキの植林や棚田が広がる櫃ケ山北麓では、山道に沿って昔ながらの谷川の景観がみられる。
 このように、渓谷を形成しながら湯原町を流れる河川は、町の東部南部の山地を流れる白根川、古屋川、福井川などの渓流である。渓流が多くみられるのは地形が急峻な町の南東部で、旭川は摺鉢山の西麓を、鉄山川は櫃ケ山の北麓を早瀬となって流れ下っている。
 旧湯原町が中国山地の山間域にあたるため、平野をゆったりと流れる川幅の大きな河川の水辺はみられないが、町の北部にダム湖の湖沼域が形成され、大きな水域がみられる。また、湯原第二堰堤より下流を流れる旭川では、急流の河川形態をなしながら、早瀬と淵、ワンドや中州が形成され、生態系の豊かさを感じさせる川辺の景観が形成されている。
一方、町の北西部の農村域を流れる藤森川や粟谷川での河川勾配は比較的小さく、その上流には、芦谷川や大杉川、皿谷川などの急渓流が多くみられ、山地の環境へと続いている。
これら町の北西部を流れる河川は、急流の多い湯原町にあって、山地の低地を比較的緩かに流れ、湯原湖の湖水域へと流れ込んでいる。
 なお、湯原町には、川上村や八束村、中和村にみられるような湿地帯はなく、ダム湖以外に、湖沼やため池などの水辺は少ない。


 旧湯原町の土地利用は、渓流域をなす山地や丘陵地が山林、河川に沿った低平地や山裾が水田となっており、旭川や鉄山川、粟谷川、田羽根川の周囲には水田や集落が開けている。
渓流域をなす山地は、町のほぼ全域にみられ、そこに広がる山林の多くは、コナラやクリ、シデ、カエデなどからなる落葉樹林とスギ・ヒノキの植林で、大月川の源流域には自然性豊かなブナ林の環境もみられる。
 これら山地を深く浸食し、瀑布や滝川を形成して流れる古屋川や大谷川の渓流域では、渓流に沿った斜面に生えるコナラやカエデなどの広葉樹が広く分布し、自然性豊かな渓谷の環境がみられる。なお、湯原町にみられる広葉樹林は、比較的若く、里山をなす二次林の環境としてとらえることができるが、このような落葉樹の環境は、河川沿いには少なく、山地の斜面に多くみることができる。
 旭川や鉄山川などの河川近くには、スギの人工林が多くみられるが、川岸に育つケヤキやエノキ、ヤナギなどの河畔樹が川面に枝を張り出している。スギ・ヒノキの植林は、櫃ケ山の北麓などにも多くみられ、自然性が低下し、薄暗い植林地の中を谷川が流れている。
 一方、湯原湖の湖畔にみられる山林の多くは、コナラやクリ、クヌギ、アベマキからなる落葉樹林で、湖に面して季節感豊かな二次林の環境がみられる。
また、町の北西部の農村域を流れる藤森川や粟谷川などの源流となる山地や丘陵地上には伐採跡地に育つ落葉低木林やアカマツ林、ミズナラ林など里山的な環境も多くみられ、その谷筋を芦谷川や大杉川、皿谷川などが急渓流となって流れている。
 次に山麓を流れる河川の水辺に目を向けてみると、旭川や鉄山川、粟谷川、田羽根川など川岸に水田や集落がみられる河川では、ツルヨシが茂る河原やワンド域が形成され、水辺の生き物にとって良好な生息空間となっていると思われる河川の景観がみられる。
 とくに、山地の谷間を清流となって流れる旭川の川辺には、砂礫が多く堆積し、ワンド域が多く形成され、ヤナギの萌芽林が生育するなど自然性豊かな河川の風景が開けている。
また、湯原第二堰堤の水辺では、川岸に竹薮が広がり、薮の中にヤナギやエノキ、ケヤキなどの川辺の樹木が多くみられるなど、急流が多い湯原町の河川にあって、静かな流れの川の風景がみられる。










  旧川上村は旭川の上流域に位置し、地域を流れる河川としては、旭川をはじめ、その支流の明蓮川、湯船川、田部川、内海谷川、天谷川、苗代川、白髪川、熊谷川、粟住川などがあげられる。
 これら山地に源を発した旭川の支流は、火山性台地の谷筋や山麓の牧野を緩やかに流れ、蒜山原を流れる旭川へと注ぐ。
 とくに、内海谷川、天谷川、苗代川など、北部の火山性の台地域を流れる旭川の支流での河川勾配は小さく、クロボコと呼ばれる火山灰に覆われた台地を長い距離で浸食し、浸食崖を形成しながら蒜山原へと流れ出す。
 村が旭川の源流域にあたるため、平野をゆったりと流れる川幅の大きな河川の水辺はみられないが、蒜山原を流れる旭川では、瀬と淵、ワンドや中州が形成され、生態系の豊かさを感じさせる川辺の景観が形成されている。
 なお、旭川の河畔には、蒜山原を流れる旭川の景観を特徴づける地形として河岸段丘がみられ、旭川の岸辺には高さ10〜20mの段丘崖が形成されている。
 また、川上村には、海抜1,159mの皆ケ山を最高峰として、擬宝珠山、三平山、朝鍋鷲ケ山などの山地が連なるが、村全体の標高が高く、比高差1,000mを超える急峻な山地や山岳地帯は存在しないため、大山の放射谷にみられるような降雨時にのみ表面を水が流れる沢はほとんどみられない。


 旧川上村の土地利用は、渓流域をなす山地が山林、台地上や山裾が牧野、その谷筋は原野や農地となっており、蒜山原に出ると河川の周囲には水田や集落が開けている。
 北部西部の渓流域に広がる山林の多くは、コナラやミズナラ、サワグルミ、トチノキなどからなる落葉樹林で、湯船川や苗代川の源流域には自然性豊かなブナ林の環境もみられる。一方、南部の山地では比較的スギ・ヒノキの植林が多くみられ、そこを流れる谷川の周囲には、自然性が低下した薄暗い森林の環境もみられる。
放牧場や高原野菜畑の景観が広がる山裾の牧野についてみると、朝鍋山麓を流れる渡瀬川の谷川に沿ってトチノキやサワグルミなどからなる渓畔林が帯状に残されており、渓流の自然が保全されている。
 また、鳩ケ原と呼ばれる古期大山の台地上や茅部野、郷原の段丘面上には、ダイコン畑や牧草地、飼料畑などの高原畑の風景が広がっており、その谷筋には、天谷川や内海谷川、宿波川などの水辺がみられ、ハンノキやヤナギが疎林をなす湿地も形成されている。
 このように、火山地形が広く分布する川上村では、蛇ケ乢湿原をはじめとして、鳩ケ原の谷筋などに湿地が形成され、ミツガシワやヌマガヤ、モウセンゴケ、イワショウブなどの湿生植物の生育する湿原の風景もみられる。
 これら火山性の台地を深く浸食して流れる苗代川や宿波川、天谷川では、水辺がツルヨシやチシマザサに覆われ、人が踏み入ることも困難な状況となっている。
 一方、水田風景が広がる蒜山原に目を向けてみると、旭川をはじめ、明蓮川や内海谷川などの河川には、ツルヨシが茂る河原や中州、ワンド域が形成され、生き物が多く棲んでいそうな水辺の景観がみられるほか、バイカモが川面にゆれる蒜山地域ならでは川辺の風景もみられる。
 また、旭川の周囲に開けた水田域には集落が散在し、集落内を流れる水路では、オオサンショウウオの姿をみることもできるといわれている。
 なお、旭川の河岸には段丘崖がみられるが、段丘崖の高さはおおむね10〜20mで、コナラやヤマザクラなどからなる落葉樹林となっており、段丘面上はダイコン畑やススキ野原、カラマツの点在する牧野が開けている。
このような流域の土地利用が起因し、蒜山原を流れる旭川の川底には、土砂がヘドロ状に堆積し、有機物による水質の汚濁や富栄養化が進んでいるとされている。


 湯原湖、旭川湖は、ともに人工のダム湖であるが、水辺に樹林が広がっているため、多くの野鳥を観察することができる。旭川湖では、対岸の林にアオサギやコサギが集団で営巣するコロニーがみらる。アオサギやコサギのほか、水辺の野鳥としてカワセミやセグロセキレイ、キセキレイの姿が見られ、たまにヤマセミが飛来することもある。
ヤマセミは、清流の指標とされる野鳥で、カワセミと同じように、土崖に丸い穴を掘って巣をつくる。また、水面に枝を張る木に止まり、水中の魚めがけて急降下して魚を捕まえて食べますが、近年その姿を見かけることは少なくなった。





真庭の河川環境

オオサンショウウオの生態

河川環境調査

大山椒魚サンクチュアリー










    川を生かしたまちづくり










    里川の自然と風景