大山椒魚サンクチュアリー 
鳥取大学演習林(蒜山の森)

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大山椒魚サンクチュアリー
蘇れハンザキの棲む懐かしくも美しい水景色






















 オオサンショウウオは、6千万年前の太古より生き続ける「生きた化石」と呼ばれる世界最大の両生類で、固体が国の特別天然記念物に指定されている。真庭地域では固体のみならず、その生息の場である河川も「棲息地」として特別天然記念物に指定されており、河川水辺の環境保全と生態系の保護・生物多様性の回復が求められている。

 しかし、河川生態系全体としての保護保全については十分な対策が講じられておらず、その棲息環境は年々悪化していることから、良好な自然環境の残る河川域及びその背後地となる森林域を生態系保全区(サンクチュアリー)に指定し、永続的な生息環境保全を行なうとともに、広域的な視野でオオサンショウウオを頂点とする清流生態系保全システムの確立をはかることが必要とされている。
 生態系の保全に配慮した川づくりや河川工法が行われるようになった今日であるが、オオサンショウウオが棲息する中山間地域の河川においては、コンクリート二次製品に頼った河川生態系工事が主流で、人と川との生活の中での係わりによって維持されていた生物多様性も、人と川との係わりが希薄化する中で急速に低下している。
 とりわけ、真庭郡北部を流れる河川には、オオサンショウウオが数多く棲息しているとされているが、生物多様性を確保する河川工法は十分とは言えず、年を追うにつれて棲息環境は減少しており、棲息個体(とくに幼生)も激減していると危惧されることから、生態系保全区(サンクチュアリー)に指定し、営巣環境の復元のほか、河川水辺及びその背後地となる森林域での自然再生などの積極的な保護対策が求められている。















 岡山県北部に位置する真庭地域は、岡山県三大河川の一つ旭川の上流域(源流含む)にあり、その河川域は国により「特別天然記念物オオサンショウウオ棲息地」の指定を受けており、オオサンショウウオを頂点とする地域固有の生態系が維持されている。
 本活動は、オオサンショウウオ棲息地において、良好な自然環境の残る河川域及びその背後地となる森林域を生態系保全区(サンクチュアリー)としての永続的な保全をはかるとともに、生物多様性が低下した区域について、自然再生活動を進めながら、広域的な視野でオオサンショウウオを頂点とする清流生態系保全システムの確立をはかる。あわせて、オオサンショウウオの保護活動を住民・NPO等と行政との協働事業として推進する自然保護ネットワークづくりをはかることを目的としている。。


 これまでオオサンショウウオは、地域住民にとって、愛されて保護される対象ではなかったが、清流環境保全についての地域的な関心は高く、良好な自然環境の残る河川域及びその背後地となる森林域を生態系保全区(サンクチュアリー)に指定することで、オオサンショウウオを環境指標とする清流環境イメージを確立することができ、自然保護について地域住民の積極的な関与が促され、河川水辺での生物多様性を回復させるグラウンドワーク活動が促進される。
 また、ともすれば規制の側面が強かったオオサンショウウオ保護であるが、生態系保全区(サンクチュアリー)を活用した自然観察会やエコツーリズムを促進することで、オオサンショウウオをシンボルとした自然保護活動・自然再生運動が活発になると期待され、中山間地域において地元住民が係わる新しい野生生物保護の動きも期待できる。
















                   地元自治体および教育委員会との協働による
             生態系保全区(サンクチュアリー)グラウンドワーク活動の手順



@生態系保全区(サンクチュアリー)の指定

 今後、オオサンショウウオ棲息地における生物多様性調査の結果を受けて、良好な自然環境の残る河川域及びその背後地となる森林域を生態系保全区(サンクチュアリー)およびその候補地に指定する(複数)。

A生態系保全区(サンクチュアリー)での生態系調査

 生態系保全区(サンクチュアリー)ごとに、オオサンショウウオを含む野生生物調査(野鳥・小動物・昆虫・水生生物調査)、水辺植生調査を実施し、保全区のオオサンショウウオの生息状況と現況生態系を把握するとともに、ホームページで紹介する。

B生態系保全区(サンクチュアリー)での環境保全計画の策定
 生態系保全区(サンクチュアリー)については、野生生物調査を継続的に実施し、その結果を受けて、保全区ごとにオオサンショウウオを頂点とする生態系保護保全計画、自然環境再生計画、森林管理計画を策定する。

Cオオサンショウウオを頂点とする広域清流生態系保全システムの検討
 今後、オオサンショウウオの保護や清流生態系保全を目的としたシンポジムや報告会・ワークッショップを開催し、広域的な視野でオオサンショウウオを頂点とする清流生態系保全システムの研究検討を行なう。研究検討にあっては地元大学(鳥取大学)や自然保護研究機関と連携し、長期的な視点・広域的な視点から生態系保全を考える。

D生態系保全区(サンクチュアリー)での自然再生作業の実施

 保全区候補地ごとに策定された環境保全計画を受けて、渓畔林の再生や生態系分断箇所について、モデル的(試行的)に多自然型自然工法・伝統的河川工法によるエコ改修を行ない、事後にモニタリング調査を実施し、その成果を検証する。

E協働型オオサンショウウオ保護・棲息地保全ネットワークの形成

 住民・県民を対象にオオサンショウウオ棲息地現地視察会や清流トレッキング会を開催するとともに、オオサンショウウオ棲息地や生態系保全区(サンクチュアリー)の環境を紹介した報告書や小冊子、電子パンフレットを作成することで、地域(真庭市)の内部に、大学(鳥取大学)などの研究機関と連携した生態系保全のネットワークづくりを進める予定である。

 「特別天然記念物オオサンショウウオ生息地生物多様性調査」を実施する中で、鳥取大学蒜山演習林「蒜山の森」の中を流れる谷川(苗代川)及びその背後地となる森林域(コナラ林、ミズナラ林、ブナ林)が生態系保全区(サンクチュアリー)の候補地の一つとして評価された。
 この区域は、面積にして400haを超える森林渓流域であり、オオサンショウウオやクマタカを頂点とする良好な生態系が残されていると考えられた。
































 とりわけ、 自然林の中を流れる清流域は、渓畔林とその背後地を含んだ形でのオオサンショウウオのサンクチュアリー(生態系保全区)として保全することが必要とされる。
 そのような環境は、真庭では、苗代谷川の奥地(鳥取大学農学部蒜山演習林)をはじめ、山乗渓谷、下和川の長瀞、明連川上流、湯船川上流、湯原湖の奥地入り江などに残されている。
 自然林や渓畔林の発達した真庭の渓流域では、どんな生き物が生息しているのだろうか。
 人の手があまり加わっていない山地の渓流域では、オオサンショウウオのほかに、ヒダサンショウウオやブチサンショウウオ、ハコネサンショウウオ、アマゴ、イワナ、ムカシトンボなど渓流の生きものが棲み、ヤマセミ、カワセミの姿も見られる。そして夏になると、アカショウビンやキビタキ、オオルリが飛来することがある。
 その周囲の山地には、テンやヤマネ、モモンガが棲み、ときにクマタカ、イヌワシの姿を見ることもあるといわれている。
 このような環境は、地域の資源であるばかりか、国民的な財産であり、エコツーリズムなどの利用に先立って、永続的な保護保全と自然保護のガイドラインが必要とされる。







































 さらに、サンクチュアリー(生態系保全区)は、山地の渓流域に限らない、昔ながらの自然を残す人里の川には、固有の生態系が維持されていることも多く、オオサンショウウオの生息の有無は別として、守りたい自然や風景がある。
 福田橋上流の旭川の水辺は、冬に多くの水鳥が飛来し、野鳥の楽園となる。
 このような環境は、自然観察の場としても優れており、一部については、人の立ち入りを制限するとともに、環境学習やエコリーリズムに活用する。

 また、延助集落や月田の家並みの裏を流れる旭川、月田川には、美しい石積み護岸が残り、「里川」としての景観と生態系を残しており、これらについてもサンクチュアリー(生態系保全区)として、保護保全を考えていきたい。






















真庭の河川環境

オオサンショウウオの生態

河川環境調査

大山椒魚サンクチュアリー










        川を生かしたまちづくり










        里川の自然と風景