旭川の水辺を中心にした町づくり
石積み護岸と古民家
久世の水景色
勝山の水景色
落合の水景色

topに
川を生かしたまちづくり
蘇れハンザキの棲む懐かしくも美しい水景色


















 真庭地域には旭川を中心に9の町村が開け、2005年3月に9の町村が合併し、新市(真庭市)が発足した。新しい市の誕生を機会に、地域住民の主体的な参加による水辺の自然や河畔の古民家、歴史遺産を活かした街づくりを積極的に展開するための「自然との共生」をテーマとした真庭市(新市)の街づくりマスタープランづくりが必要とされている。
「自然との共生」をテーマにした河畔のまちづくり











































 現在、真庭地域には旭川を中心に9の町村が存在していたが、行政改革の進む中、2005年3月に9の町村が合併し、新市(真庭市)が発足した。そのような地域の歴史の節目の時代に、地域の中心を流れる旭川の自然や河畔の歴史遺産を活かして、川と人が共生する生態系豊かな地域づくりを進め、安心安全で美しい新市(真庭市)の中心街の景観づくりを進めることで、新市住民の「心の結束」と、河川や故郷の自然・歴史を愛する心を育て、「美しい日本の自然と風景の保全再生」と防災安全をはかることもできる。
 とりわけ、真庭市南部に位置する落合地区(旧落合町)、久世地区(旧久世町)、勝山地区(旧勝山町)は、岡山県中北部の中国山地と吉備高原に挟まれた小盆地に位置し、岡山県三大河川の一つ旭川の河畔に発達した町で、古くから高瀬舟の水運で栄えてきた。
 3つの地区は隣接し、3地区の人口を合わせると3万5千人となる。これら3町は、周辺6ヶ町村をまきこむ形で、平成17年3月に合併し、人口5万4千人の市(真庭市)となった。そして、新市(真庭市)の誕生において、落合地区、久世地区、勝山地区の既成市街地は、南部都市交流ゾーンとして新しい市(まち)の中心となる。


 中国山地の山間(岡山県真庭郡)を流れる旭川とその支流には、清流を中心に集落が形成されており、人と川との生活の中で関わりを感じさせる風情ある水景色がみられ、そこには太古の昔より特別天然記念物オオサンショウウオが広く生息している。
 オオサンショウウオの生息環境となる緑豊かな川の自然を保全再生していくことで、旭川河畔の集落において、清流の自然と共生した静かなで美しい住環境が保全されることが期待される。





 これまで、落合地区、久世地区、勝山地区は、それぞれに都市計画や街づくりの構想を策定しているが、市街地が隣接(連続)しているにも関わらず、行政単位が別であったため、個別の行政運営を進めてきたため、必ずしも統一性のある計画となっておらず、めざす街のイメージはそれぞれ違っていた。
 一方、落合地区、久世地区、勝山地区は、それぞれ市街地を旭川が流れており、古くから旭川の水運(高瀬舟)で栄えた町で、地域住民は、旭川に対して「熱い思い」と共通の歴史認識をもっており、旭川の水辺を取り込んだ街づくり(都市計画)に期待する声も多い。

 また、旭川水系は、琵琶湖水系に次いで生息魚の種数が豊富で、全国でも屈指の生物多様性に富んだ水系とされ、その上流域は河川そのものが「特別天然記念物オオサンショウウオ生息地」として国(文化庁)の指定を受けているなど、河川水辺の生態系保全について、ガイドラインづくりも必要となっている。



















 従来、街づくりの計画(都市計画など)は、行政主導で進められ、主役である地域住民は、住民参加の名のもとに、末端作業の一部を行なってきました。とくに田舎では、そういう傾向が強く、住民が知らない間に重要なことがらが、不透明な状況のもとで決められてきた。
 旭川の水辺を生かした自然再生型まちづくりの取り組みにより、新市住民の「心の結束」と、河川や故郷の自然・歴史を愛する心を育て、「美しい日本の自然と風景の保全再生」をはかっていく。
 そして、新市(真庭市)誕生に機会に、「街づくり」を行政主導から住民主体に移行させようという挑戦である。「自然との共生」という地球環境時代に求められる価値観のもと、住民発案のもとに進めることで、中山間地(農村)における新しい「協働型(パートナーシップ型)街づくり」のスタイルを確立させていく。










 勝山の水辺風景・勝山の水辺風景       勝山の水辺風景・勝山の水辺風景       勝山の水辺風景・勝山の水辺風景

 勝山の市街地は、旭川の谷底平野に発達した城下町で、市街地に隣接して城山、太鼓山の自然緑地が見られる。街の周囲は丘陵山地で、背後(北側)には中国山地の山並が続き、南は吉備高原に続く里山丘陵地帯となっている。
 市街地近くで旭川と新庄川が合流し、河川が大きく蛇行しており、一部に水田が見られるが、平地は少ない。旭川の水辺には中州やワンド域が見られ、ヤナギが育っている。
 勝山の街は、城下町であるが、高瀬舟の水運でも栄え、旭川の河岸には高瀬舟の発着場跡が今も残り、河畔には古い家並みや白壁の土蔵群が見られる。
市街地には、武家屋敷や古い商家が残り、寺院が連なっているほか、街中を古い街道が通り、風情ある町並みが形成されている。
旭川の左岸に勝山町の市街地が形成され、JR姫新線の駅もあり、町並み保存地区を中心に多くの観光客が訪れるようになったが、街の人口は減少傾向にある


月田地区は、月田川の河畔に開けた水田農村地帯に発達した集落域で、旧道に沿って家並みが続き、古い民家やかつての造り酒屋、JR姫新線の月田駅も見られる。
 集落の周囲には丘陵斜面や月田川の水辺で、静かな山里の環境となっている。丘陵地は緩やかな台地状の地形となっていて、里山の環境や農地が開けている。丘陵地の山裾は段丘状になっていて、農地や民家がみられる。
 月田川は、丘陵地の間を緩やかに流れ下る人里の川で、河畔は農地となっているが、月田の集落域では、河畔に昔懐かしい家並みの風景が見られるほか、川に沿ってJR姫新線の鉄道が続いている。


 久世の水辺風景・久世の水辺風景       久世の水辺風景・久世の水辺風景       久世の水辺風景・久世の水辺風景



 久世町の市街地は、旭川河畔の小盆地に発達している。市街地の周囲には里山をなす丘陵地や水田農村域が広がり、庄屋屋敷や神社、溜池が見られる。
 街の背後には、中国山地に連なる丘陵地が控える。市街地付近で旭川が緩やかに蛇行し、旭川の堤防上には桜並木(トンネル桜)が続く。市街地近くでも旭川の水辺には中州やワンド域が発達し、ヤナギが育っている。
 久世の街は、古くより高瀬舟の水運や牛市、商業で栄え、下流は落合の市街地、上流には勝山の市街地が開ける。落合と同じく、昭和9年の伊勢湾台風で街は大被害を受けたが、河畔には古い旅館が見られるほか、街中には古い商家が多く残る。
 市街地には、久世町のシンボルとなるフレンチルネッサンス様式の明治建築物(旧遷喬尋常小学校)が管理保存されている。また、街裏を旧出雲街道が通り、旧道沿いに古い民家が家並みをなして残るほか、寺院も多く街中に見られる。
 旭川河畔に人口が集中し、JR姫新線の駅もあり、かつてより商業で栄えた街であるが、中心市街地が衰退つつある。
 
 目木地区は、旭川の支流目木川の河畔に開けた水田農村地帯に発達した集落域である。目木川は中国山地の山間を流れ下る清流河川で、堤防に桜が並木状に植えられている。
 集落域では、古い街道(旧出雲街道)に沿って家並みが続き、古い民家や豪壮な庄屋屋敷、巨樹も見られる。集落の周囲には水田域が広がり、里山をなす丘陵地と接している。丘陵地の山裾は段丘状になっていて、農地や民家、溜池の水辺がみられる。その麓には、民家が連なり集落が形成されている。





 落合の水辺風景・落合の水辺風景       落合の水辺風景・落合の水辺風景       落合の水辺風景・落合の水辺風景



 落合の市街地は、旭川の小盆地に発達し、周囲は里山をなす丘陵地帯である。市街地付近で旭川と備中川が合流し、旭川と備中川の水辺には中州やワンド域が見られる。旭川は市街地下流で大きくS字に蛇行している。
 旭川の両岸に市街地が形成され、ここからは、北に中国山地の山並を遠望し、南は吉備高原に続く里山丘陵地帯である。市街地に隣接して、里山丘陵である「しめ山」が位置し、垂水の街は「しめ山」の麓に発達している。
 落合の市街地は、主に垂水地区と西原地区からなり、市街地には古い民家や神社も残る。この街は、古くから高瀬舟の水運で栄え、豪商屋敷も見られたが、昭和9年の伊勢湾台風で大被害を受け、これより河畔の環境は一変した。現在、旭川の河畔には大きな堤防が築かれ、堤防には桜並木が見られる。
 西原地区にJR姫新線の美作落合駅があるほか、中国自動車道の落合インターチェンジは垂水の市街地に隣接する市瀬地区にあり、市街地に人口が集中しているが、長期にわたり、中心市街地が衰退している。
 市街地の周囲は丘陵地と水田農村域で、山裾には庄屋屋敷や溜池が見られる。

 栗原地区、鹿田地区ともに、旭川の支流備中川の河畔に開けた集落域で、旧国道に沿って家並みが続き、古い民家やかつての造り酒屋も見られる。
栗原、鹿田の町並みの周囲には水田農村地帯が広がり、丘陵地と接している。丘陵地の山裾には河岸段丘が形成され、集落も見られる。
備中川は水田農村域を緩やかに蛇行して流れる河川で、ワンドが多くみられ、両岸には竹薮をなす河畔林が発達し、ヤナギやエノキの高木が育つ。

 旦土地区は、旭川の河畔に発達した集落域で、このあたり、旭川が隆起準平原をなす丘陵地を深く侵食し、河谷を形成して流れている。この付近一帯は、平地は小さく、集落の背後は河谷の急斜面である。
 旭川の河谷にはダム湖(旭川湖)の水面が広がり、集落周辺は春に湖畔となる。湖畔には桜が植えられ並木をなし、春の風物詩となっている。旦土の下流には湖畔干潟が形成され、干潟にはヤナギ低木林が広がり、ワンドが見られる。



 落合地域(落合市街地および近郊、栗原・鹿田地区、旦土地区)、久世地域(久世市街地および近郊、目木地区)、勝山地域(勝山市街地および近郊、月田地区)に分布する環境資源を活かした街づくりの方向性として、■環境文化の振興と創生、■景観・風景の保全と創生、■生態系・生物多様性の保全、■観光交流による地域振興の4つを考えた。











 景観・風景の保全と創生として、風景をなす建築遺産や歴史遺産をグラウンドワーク活動によって保全活用したり、並木の植樹や石積みによる護岸改修など、「環境文化遺産」の保全創出による景観形成や風景づくりを推進する。
 市街地および近郊に残る「環境文化遺産」を景観資源に、住民・行政・企業の協働(パートナーシップ)により、「美しい街の風景」、「風情ある河畔の風景」を演出する。
 河川水辺の景観を生かした街づくりや、シンボルとなる「環境文化遺産」をランドマークに街や集落の景観づくりを推進する。
 街区や集落において、堤防の桜並木など河畔の風物詩を楽しむライフスタイルを街づくりに取り入れ、河川水辺の景観保全・風景づくりを住民主体で展開する。
 さらには、日露戦争当時の新庄村の「がいせん桜」に例を見るように、未来に向けて新しい「環境文化遺産」の創出をはかる。


 生態系・生物多様性の保全として、旭川の水辺環境を生かした緑豊かな街の風景づくりを進める。
 ここでは、昔懐かしい川や里山の風景の再生によるエコロジカルな街づくりを推進し、街づくり(都市計画)における生態系・生物多様性の保全をはかることで、緑豊かな街づくりによる生態系の保全と保健保養性の保全を進める。
 さらには、河畔樹や水辺植生の保全による河川生態系の連続性の保全し、街を取り囲む里山丘陵域での広葉樹林や溜池の保全による生物多様性の保全する。
 あわせて、河川水辺、公園緑地、里山丘陵地、街中樹木、農地など緑の連続性の確保するともに、河畔樹の保存・育成や多自然型川づくり工法、近自然川づくり工法による河川生態系の保全をはかり、街と川、里山で生態系が連続するビオトープコリドー「水と緑の回廊」の形成する。
























 観光交流による地域振興として、「環境文化遺産」を観光資源、交流施設として保全活用し、農村に残る「環境文化遺産」を巡る観光、グリーン・ツーリズムを振興することで、田園や里山の自然と風物詩を楽しむことのできる農村型の街づくりを進める。
 あわせて、「田舎暮らし」に憧れる都市生活者に好まれる街づくりや、オルタナティブ・ツーリズムに対応した街づくりを進め、観光交流拠点の整備を行う。
 ここでは、カメラウォークなど観光活動・文化活動の発想を街づくりに導入するとともに、「環境文化遺産」や農村生活文化のオルタナティブ・ツーリズム活用をはかる。
 そして、どこか懐かしく田舎(農村)を感じさせる街景観の形成させるなど、来訪者に好印象を与える街の風景づくり・美観形成をはかるとともに、都市と農村との共生対流に対応した田舎型の街づくり、交流拠点整備を進める。


















 環境文化の振興と創生として、古い建物(建築遺産)や歴史遺産を「環境文化遺産」として位置づけ、市街地および近郊に残る「環境文化遺産」を生かした街づくり(都市計画)を進める。
 「環境文化遺産」を環境資源として活用することで、地球環境時代に求められる古き良き時代の環境文化とライフスタイルを創出する。あわせて、循環型社会の形成という視点で街のあり方を考え、街づくりを環境教育に活かし、街づくりにおいて新しい環境建築のアイデアや技術を導入する。
 「環境文化遺産」の認証・認定をはかり、街に残る「環境文化遺産」を景観資源に「美しい街の風景」、「風情ある河畔の風景」を演出する。
 建築遺産(古い建物など)を環境文化の振興の拠点施設、交流施設として活用し、エコミュージアムの発想で街づくりを進め、環境文化遺産を巡る散策コースの設定と美観の形成する。



























 真庭市北部は、オオサンショウウオが数多く棲息しているとされているが、砂防堰堤や落差工などの河川改修工事によって生態系が分断されるなど、その繁殖域は、限られた場所になっていることから、オオサンショウウオが多く生息するとされる水域について、河川形状、植生、水生生物の生息状況、人の手の加わり方などを調査することで、人とオオサンショウウオとの川を通じての係わりを解明し、今後の環境保全と川を生かした地域づくり・まちづくり「自然共生型“河畔の街づくり”」を考える。

 そして、生物多様性調査の成果を踏まえ、オオサンショウウオを環境指標とする人と自然とが共生する川の環境イメージを確立するとともに、人里や集落域における住民参加型の川づくり工法について調査研究を重ね、清流の環境を活かした風情と潤いのある生活空間の形成や生物多様性に富んだ水辺環境の保全再生について調査研究を行う。
 これまでの調査記録などをまとめ報告書を作成するとともに、地元教育委員会と連携し、清流環境シンポジウムや里川環境フォーラムなどの報告会を開催し、オオサンショウウオをシンボルに清流の環境を活かした地域づくりについて意見交流をはかる。



真庭の河川環境

オオサンショウウオの生態

河川環境調査

大山椒魚サンクチュアリー










        川を生かしたまちづくり










        里川の自然と風景