農村の人里を流れる川は、河畔に農地が広がり、近くに集落がみられることから、古くから人の手によって管理され、利用されてきた温もりのある川であり、生活の知恵や文化がみられた。
このような「人里を流れる川」は、畔が石積み護岸、あるいは、スロープ(緩斜面)であった。農家の人たちは、川で洗いものをしたり、水をくむために、そして、農地に水を引くために、石を積んで、水の流れを変えていた。このことが結果的に川の流れに微妙な変化をもたせることになり、小さな瀬や淵、止水域(水だたえ)をつくることにもなっていた。
また、ツルヨシやススキが育つ河原では、牛が遊ばされ、そこに生える草は、家畜の餌になっていた。スロープ上に生える夏草は、刈り取られ、家畜の餌や屋根材として利用されていたため、四季に変化のある風景をみせ、「人里を流れる川」の近くには、多くの種の草花が育っていた。さらに、川沿いの土手に目を向けてみると、川辺に梅や柿の木が植えられ、川面に静かな影を落としていた。
このように「人里を流れる川」では、人と川との生活の中での係わりによって、多様な環境が形成され、それに応じて生物生息環境がみられた。
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